6話 崩落と少年エド レドル

 一方夕暮れ、セーゲルは何者かを恐れて走り、ある林にたどり着き落ち着きを取り戻し、水筒の水をのみほして、立ち上がったとき、何者かの姿をみて驚き後ずさりした。

「うああっ」

《ズドーン》

 明らかに落とし穴のようなすさまじい空洞に落ちた衝撃とともに、尻に手を当てる、呼吸ができないほどに背筋から腰にかけて痛みが走る。

「イテテ……くう」

「……だれ?」

 そこはいくつも道がある入り組んだ洞窟だった。そのひとつから声がして、彼は近づく。

「なんだ、ガキか」

「お兄さん……だれ?僕はエド」

 そこにいたのは少年だった。ぼろぼろの帽子と服を着て、手にはランプを持っていた。体も汚く、人間的な生活をしている雰囲気も感じられなかった。

(なれなれしいガキだ、それにどうしてこんなに汚いんだ)

「お兄さん、どうしてここに?」

「いや、別にきたくてきたわけじゃないんだが気づいたらな……」

 セーゲルが詳しく説明すると、少年は考えこんだようにうつむいた。

「……レドルがいってたな、立場が上のときはなるべくいい取引を持ち掛けろって」

「何の話だ?」

 しばらくするとセーゲルは少年に案内されてあるぼろい魔導守衛の目の前に立っていた。

 古びた魔道コアに機械的外装、魔道ラインやパイプ、間違いない、これは自動で動く人形であり、言い換えるのなら人型の機械だ。

(なんでこんなボロボロによごれてこんな事もしないといけないんだ)

 少年は、取引を持ち掛けてきた、自分がこの迷路のような洞窟から出口へ案内する代わりに、あるものを修理してくれと、というのも、セーゲルの持つ奇妙な紫の魔導杖をみて少年は彼が魔術を使えることを見破ったらしい。

「どうにか……できる?」

「へえへえ、やりますよ」

 それからしばらくして、セーゲルはパパっと修理を終えたが、しかし魔術は一つもつかわなかった。

「これで、魔道コアに魔力をいれれば、ずいぶん古いコアだし、充填もされていなかったのだろう」

 そうしてセーゲルは、マナを直接おくりこもうとソレの胸部中央の魔導コアに手を伸ばした。

 目を閉じて、マナを直接送り込む、人に譲る時もこうする、詠唱は特に必要はない。だが奇妙な感覚を覚えた、確かに回路は修復したのだが、この魔導守衛自体がそれを拒んでいるような……そして、ふと後ずさりした。

「霊力!!?」

「!!」

 子供はおどろいたが、セーゲルの慌てふためいた様子に不審な目でじろりとにらめつけた。

「はいはい、わかりましたよ、やればいいんでしょう」

 しかし、魔導守衛は全く変化もなく、沈黙を続けていた。

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