4話 喜劇 長老のガド
「冗談じゃない……目的地変更だ、あの女、どこまでおいかけてきてるんだ!!」
ショートでフードをかぶり、ショートで髪のは跳ねた、まつ毛のキリっとした凛々しい女の顔がうかぶ。心配そうにこちらをみている、その心配こそが、自分の心を焦らせる。
「急げ、あの女から遠ざかるんだ、なるべく遠く、遠くに、俺は運命から逃れるんだ!!」
そしてセーゲルは、その村を目指した、あのロベルという老人の向かった村だ。
ロベルという老人は、村人に囲まれながら話をしていた。昔話だ。
「私は優れた……英雄に協力する精鋭パーティの一員だった……」
村人たちは皆車座になりいすにすわり、ロベルの話を聞いていた。
「あまりにも優れた仲間、光栄な役割、幻のような楽しく誇らしい日々だった、だが私は後悔している……魔王軍を倒そうという頃、私は怖れるあまり、仲間の事を深く気に掛ける余裕がなかった、仲間が……悪に手を染めていく事実に目を背けていたのだ」
「……」
「何があったんです?」
村人の一人の女性が尋ねた。
「窃盗や、裏切りや、市民へのひどい仕打ち、仲間は、魔王軍の作りだした“影のマナ”にやられて、精神を侵されていたんだ」
村人たちがざわめきだす。
「なんてことだ」
「そんな話も聞いたことがある」
老人は続けた。
「それで、旅をしているんだ、なぜ仲間を救えなかったのか、どうして自分はあれほど怖れてしまったのか、どこかで、贖罪をすべきではないかと、こんな歳になり、余裕ができるまで時間がかかってしまったが」
ロベルが話を終えると、自然と周囲から拍手がおこった。話をおえると、杖をつき貫禄のある白いひげを生やしたフードをかぶった目の垂れた老人があらわれて、いった。
「長老のガドといいます、いい話をどうもありがとう、この村にとって刺激になるでしょう、ささ、この村を案内します、ついでに食事にでもいきましょう」
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