第一節 第一話 ニニ村とロベル
老人ロベルが気が付くと、そこはニニ村の小さな病院のベッドの上だった。子供たちに囲まれて目を覚まし、彼らはロベルを物珍しそうにみていたが、体を起こすと若い男の医師が呼ばれてカーテンを開け顔を出した。
「こんにちは、私はダドロ、このニニ村の医者をしているものです」
「私は、故あって旅をしているロベルというものです」
「なぜです?こんな鎧まで着て少しばかり無茶をしているように見えますが、いえ、すみません」
口が滑ったというように口を覆うダドロ。
「いえいえ、いいんです」
ロベルは笑った。ダドロという医者は眼鏡をかけた猫背で髪を後ろで束ね、触覚のようにつきだした前髪を持つ青年で、眼鏡のせいでめもとはわかりづらかったが、優し気なおっとりとした下がった目じりをしていた。体がか細くしい感じも受けた。ロベルがいうにはただの暑さと疲労のために倒れただけらしい。
「もう大丈夫です、病気でもない私がここに泊まるのもまずいでしょう、宿屋を教えてくれませんか?」
「ええ、では」
と患者がいないのでと直ぐ傍の宿屋を案内され、そこに入ることになった。別れ際、ダドロがいう。
「明日、村長が貴方を訪ねていくかもしれません、私も手が空いていたら同行します」
夜、夢をみた。若いころ彼は、優れた魔導士でありながら、自分の謙遜してばかりだった。〝彼ら〟と仲間になったころ、〝彼ら〟はとてもやさしく親身になって彼の優れた面を掘り起こしてくれた。おかげでどこにも行き場のなかった自分が、有り余る光栄な立場を得る事ができた。〝大魔王という悪を打ち滅ぼす〟その役割を。しかし―途中から夢や記憶がその記憶の持つ毒々しさに歪む。悪を打ち滅ぼすはずのものが、悪に飲まれて、毒を吐く―自分に、まるで、かつて排除され、必要とされなかった時のように、自分は彼らに攻撃され、被害をうけた。
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