だから...今がある

@ComGin

第1話

あれはずいぶん昔のこと。

それでも消えないあの日、あの景色。

僕は3歳くらいだっただろうか。

ある年の正月僕は、母の自転車の後ろに座っていた。どこからかの帰り道だろぅ。母はうしろを気にしていた。何度も何度も。

家が見えてきたくらいだろうか。母が一言った「うしろの白い車ずっと付いてきてる気がする」

そして自転車のスピードをあげた。家に着く最後の曲がり角をまがったら車が見えなくなった。母は「気のせいならいいけど、、、」今でもハッキリ思い出せる母の不安な声。

僕の家は住宅だ。駐輪場に自転車を停めエレベーターを待っていると、あの白い車が来た。

エレベーターは最上階。

僕は怖かった。

白い車の運転手はエレベーターまで走って来た。

一緒に乗ることになった。

母は僕の手を握りエレベーターの階を押した。後に乗ったその人は何処の階も押さなかった。

住人ではない。母は確信した。

ピンポーン。扉が開いた。

うしろに付いてくるのがわかった。

玄関の扉の前まで来た…

母は開けずそのまま違う棟へ歩きはじめた。

階段からずっと見てくる、男の人。


不安と恐怖を覚えた日。

後から知った。母が開けなかった理由を…。

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