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「今日はこっちに泊まれだってよ、先輩。」
ガタガタと震えながら宝田がそう言って、スマホを仕舞うとすぐにポケットの中に手を入れてきた。
「私の方の先輩もいいって言ってるのかな!?」
「逆に聞くけど、長峰だけどうやって帰るつもりなの?」
冷静にそう言われ、私はガタガタと震えながら頷いた。
「宝田!!あそこ、ホテルだよね!!
行ってみよう!!もう無理!!
足、もう雪でグチグチャで無理!!
凍る!!凍ってしまう!!」
パンツスーツでは来たけれど、ヒールの靴。
靴の中は雪でグチグチャで、寒くて凍りそうだった。
「足、痛くてもう歩けない~・・・。
お母さ~ん・・・。」
「結婚してから急にお母さん大好きになったよね!?」
宝田がそう言って笑いながら、私に背中を向けてきた・・・。
何かと思っていると・・・
思っていると・・・
ゆっくりと、しゃがんで・・・
「長峰歩くの遅いから、余計寒くなる!!
早く乗って!!」
と、言ってきた・・・。
「・・・おっっっも!!!!!」
「そんな!?そんなに!?」
2人分の鞄は私が持ち、宝田は猛吹雪の中を数メートル先にある、雪の中で微かに見えるホテルを目指している。
確かに、私を連れて歩くよりは速い。
凄く、速い。
それに感心していたのに、こんな風に言われて。
「宝田!!転ばないでよ!?」
「俺達、東京生まれの東京育ち、冬を完全に舐めてたね!!
・・・くっそ~!!タクシーくらい呼ぶ時間くれても良かったのにね、あの人!!!
すぐに敷地から出ていけなんて言ってきてさ!!!
ずっと見張ってるし!!!」
「あんな人と仕事なんてしたくないよね!!
マジなんなのあのオッサン!!!
本当は絶対に仕事出来ないオッサンなんだと思うよ!!!
次行こう!!次!!」
「うん!!次行こう!!次!!!」
宝田の背中におぶられながら、猛吹雪の中そんな会話をしていく。
目も口もそんなに開けられないはずなのに、口はよく動いた。
さっき感じた怒りの感情で熱くなっていたからか、不思議と身体も熱く感じる。
宝田の背中におんぶされながらそんなことを思っていると、猛吹雪の中・・・
雪はこんな音がするのかと驚いてもいる中・・・
聞こえてきた・・・。
宝田のちいさな声が、聞こえてきた・・・。
「この案件が終わったら、子ども作る?」
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