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そんな夫婦・・・。

宝田と私はそんな夫婦・・・。




なのに・・・




お互いに身体を寄せ、くっつき合っている・・・。




私の右手を強く繋いでくれ、更に宝田のコートのポケットにまで入れてくれ・・・。




そんなことまでしてくれて・・・




そんなことまでしてくれるけど・・・




でも・・・




でも・・・




「「極寒・・・っっっ!!!!」」




宝田と重なった声も気にならないくらいに極寒!!!!!




東京から1時間くらい新幹線に乗っただけの地域なのに、信じられないくらいの吹雪とサクサクとしている足元。




「天気予報、どうしたんだよ!?

雪降るなんて言ってなかったよな!?

長峰、そう言ってたよな!?」




「雪マークなんてなかったから!!

それにこれ、雪どころじゃない!!!

猛吹雪なんだけど!!!」




私の右手をカイロ代わりにしているであろう宝田。

でも、今は宝田の左手から伝わる熱に少しでも救われる。




今は宝田の存在に感謝をしながら、スーツにヒールの靴、コートにマフラーだけの姿で身体を縮ませ宝田と歩いていると・・・




「長峰・・・東京の天気予報、見てないよね?」




そう、聞かれて・・・




そう聞かれてしまって・・・




「はあ!?嘘だろ!!!?」




無言でいた私に、宝田が大声を上げた。

そんな宝田に私も怒鳴る。




「自分でも確認しなかった宝田が悪いんでしょ!?」




「長峰が天気予報もろくに見られない女だとは思わないだろ!!!」




「もう、やだ~・・・。

信じられない・・・。

ここまで来て成果もなかったし、なんなのもぉ~・・・。

早く家に帰りたいよ~・・・お母さ~ん・・・。」




「・・・って、実家の方!?

そんなこと言うなら、俺だって実家に帰りたいし!!」




宝田とそんないつもの大喧嘩を繰り広げ、なんとか新幹線の駅まで戻ってきたら・・・。

新幹線は、新幹線は・・・止まっていた・・・。

止まっていた・・・。

風が強すぎたらしい・・・。

風が、強すぎたらしい・・・。




「「ガ~~~ン・・・。」」




色んなことに色々と言いたいことはあるけれど、放心状態になりそんな言葉が出ると宝田とまた重なった。




「宝田、寒いっ寒いっ!!

左手も入れさせて!!」




「それはズルいって!!

俺も右手寒いし!!!」




私が左手も宝田の左ポケットに入れようとすると、それを阻止され・・・。




「駅で何してるの、私達・・・。」




向かい合って、宝田の左右のポケットに私の手を入れている状態で・・・。

身体もくっつけ合い、そんなことをガタガタ震えながらしていて・・・。




「「とりあえず、電話。」」




また2人で言葉が重なり・・・




「宝田掛けてよ。」




「長峰に任せる。」




お互いにそう言って、顔を見合わせる・・・。




そして、同じタイミングで口を開き・・・




「「じゃ~んけ~ん・・・グーっ!!」」




「「じゃ~んけ~ん・・・グーっ!!」」




「「じゃ~んけ~ん・・・チョキっ!!」」




言葉でのじゃんけんを繰り広げ・・・




20回くらいあいこが続き、最後は宝田が折れて会社に電話を掛けてくれた。




まあ・・・




こんな感じでもあるから、ほとんどの人達からは何かしら勘づかれる。




宝田と私は、いわゆる幼馴染みというもの。




愛がないどころか犬猿の仲。




でも、めちゃくちゃ仲が悪いかといったらまたそういうことではなくて。




宝田と私の関係は、何と説明をしたらいいのか自分達でもよく分からない。




一応夫婦になったけれど、全然よく分からない。

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