第13話 撮影
「それじゃあ、撮影入ります!」
オロオロしているファン数人と肝の座ったわたし。逆じゃないの、って思う。
「えと、もしかして、……聞くけども、君たち童貞!?」
「俺たちは、たくさんのAV見たから大丈夫だよ」
何故、二回目の撮影なのに、監督は素人同然のファンを選んだのだろう。案の定、最初から撮影は難航した。
「えと!? 手伝った方がいいのかな」
「いや、沙也加ちゃんにそんなことさせられないです!」
気持ちはありがたいのだが、女と違って男はアレが立たないと話にならないのだ。さっきの勃起はなんだったんだ。
「おい、何やってるんだ!」
監督がこちらに走ってきて、説明を聞いていた。
「沙也加はちょっと休憩していてくれ」
ファンの子達だから手伝ってあげたいのも山々だけども、わたしがいれば余計に焦ると言うので、わたしは仕方なくテレビでも見て時間を潰そうとした。
「それで、山崎さん、沙也加さんのお二人は結婚を前提にお付き合いをしているのでしょうか」
ふざけんな、付き合ってないって言ってるだろ。わたしは慌てて番組を変える。お昼のテレビはワイドショーネタがメインでどの局に変えてもこのネタばかりだった。
日本の主婦はこんなつまらない話のどこが面白いんだろうか。わたしはテレビを消すとスタジオを見渡した。
何台ものカメラと何人ものカメラマン。スタジオは殺気立っていた。撮影が終わらなければ、彼らも帰れない。
男の子は大変だよな、とは思う。女なら正直相手が嫌いだろうがなんだろうが、抱かれてしまえば、メンタルな部分は抜きにして撮影に支障は出ない。
女の身体は男には理解できないだろうが、襲われ前戯なしでされたとしたって、濡れるのだ。それを勘違いして、女がエロいと思う男もいるらしいが……。
濡れるのは防衛本能で感じるとは別次元なんだ。男はそれを全く理解せずに大人になる。
保健体育でも女ばかりリスクが強調されて、男は何も知らされずに大人になる。おい、日本の教育間違ってるぞ。
そんなことを考えながら、椅子に座ってると監督がバツが悪そうな笑みを浮かべてこっちに走ってきた。
「なあ、手伝ってくれないか?」
「えっ!? 今さっき休憩してくれって……」
「いやさ、さっきニュース番組つけてたよな。あいつら、あのニュース聞いて元気になってきたんだよ」
「なんで……」
「嫉妬心かな」
「なんのことよ」
「まあまあ、そう言うなよ」
要するにファンの子は、山崎先生への嫉妬心から元気になってきたらしいのだ。同じ線上にあるとは思えないんだが……。仕方がないので、わたしはファンの前に行ってぎこちない笑みを作った。
「大丈夫かな?」
「あの沙也加ちゃんのお相手の山崎さんと……、そのエッチとかしました?」
「そら、付き合ってるからなあ」
「はあ!?」
監督の言葉に思わず食ってかかりたくなる。監督はウインクした。要するに話を合わせろと言うことらしい。
「そらさ、付き合ってるんだから、当たり前でしょ」
「今だけでも、忘れさせてやるからちょっと待ってて」
あの凄く間違った方向に話が進んでいってるんですが……。悠一の方を見るとまあまあと苦笑いしていた。
嫉妬心からかファンの子達はそれからは元気になって、わたしを必要以上に舐めまわした。一応の覚悟はしてるけどね。ちょっと、前回はわたし処女だったんだよ。
わたしが監督の方に目を向けると両手を合わせて頭を下げられた。まあ、仕事だから頑張るけどね。
「沙也加、気持ちいいか?」
なに、それ……。
監督がカンペを出してくる。そこには、うん、感じてるって書いてて思わず失笑してしまう。こんなのカンペじゃないだろ。
「……うん、感じてる」
「沙也加、好きだよ」
知ってる……。じゃなきゃ、ファンがここまではやらない。
監督がまたカンペを出した。わたしもって書いてある。まじかよ。わたしは棒読みでその言葉をなぞる。
「わたしも……」
結局、かなり熱心に舐められたし、かなり激しく腰を振ってくれた。
いや、マジで痛いんですけども……。撮影が終わる頃には、わたしは立てなくなってた。
「痛たたたたたっ」
「沙也加ちゃん、ごめん……やりすぎた」
「女の子の身体のこと、もうちょっと理解した方がいいよ。本当に痛いし最悪だよ」
「だって、あいつのこと」
「山崎先生のこと?」
「そう、なんであいつと……」
「テレビや雑誌が何を言ってるのか知らないけどね。わたしと山崎先生は何もないよ。ただ、山崎先生は三年前に好きだと言った言葉に婚約指輪で応えただけ。もちろん、今のわたしがオッケーできる立場でもないからさ。お断りしたところよ」
「なぜ、結婚したいと言ってくれたんなら、付きあえばいいんだよ」
「そうしたら、こんなことやってられないよ」
「こんなことしなくてもいいじゃん。山崎先生のこと好きなんだろ!」
「あれだけ嫉妬してたのに、何言ってるのよ。馬鹿ねえ。わたしは山崎先生と結婚しないよ。決めたんだから……」
「なぜ!?」
「そんな単純じゃないのよ。彼にも立場がある。わたしもこの世界に生半可な覚悟で入ったんじゃないんだよ。そんな簡単にはいそうですか、なんて言えるわけないじゃん」
「俺たちは、沙也加ちゃんがそれでいいなら、いいんだけどさ」
「うん、それでいい。それよりさ」
これはいい機会だと思った。ファンに向かってわたしはお願いをした。
「ねえ、SNSでわたしと山崎先生は何もないことを拡散してくれないかな。誰だか分からないけれども、山崎先生を追い落とそうとしている奴らとも戦って欲しい。お友達にもそう言って拡散して欲しい」
わたしのファンは少ないとは言えども結構いる。彼らがふたりのことを否定するSNSを配信し出したら、どう状況が変わるか分からない。
「分かった。俺達拡散するよ。なるべく多く、そして沙也加と一緒に戦うよ」
「ありがとう。これ、わたしのアドレスだからね。何かあったら教えて欲しい」
「分かった。じゃあ行くな」
「うん、わたしは暫く立てないかな」
「その件については本当にごめん」
「あはははっ、いいよ。こう言うことがあることも覚悟の上だよ」
「ありがとう。沙也加ちゃんを好きな気持ち強くなった」
「うん、ちゃんと買ってね」
「もちろんさ、100枚は買うよ」
「ちょっと、そんな英語3文字グループの商法みたいなことしないから、一枚でいいからね」
わたしは、成り行きとは言えいい方向に進みそうな気がした。SNSを拡散するのは主に一般ユーザーだ。反対意見が大きく出てくれば、ひっくり返せるかもしれない。
「それにしても痛いよーっ」
あそこが腫れてわ無茶苦茶痛かった。やはり一回目の撮影は慣れた方ばかりだったからこそ、わたしのことを考えてくれてたんだ。普通に暴れ馬にやられたら、こうなることは当然だった。
「まあ、いいか。楽しんでくれたのならね」
――――――――
これなら規制にはならないかな。
これで規制かかるなら、流石に怒るよ 笑
みなさん読んでいただきありがとうございます。
今後も応援よろしくお願いします。
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