第4話 撮影 後半

「休憩終わるけども、沙也加ちゃん大丈夫?」


「うん、行けると思う」


 覚悟を決めてきたんだ。脱ぐだけで、躊躇ちゆうちょしてるなんて、わたしらしくはない。


「すみませんでした」


 わたしはみんなの前に立って頭を下げた。監督と撮影スタッフ、男優さんが微笑みながら待ってくれていた。男優さんは真面目そうな人に見えて、少し安心した。


「じゃあ撮影の方法を変えようか。るり、脱がすの手伝ってあげてくれないか」


「分かったよ、大丈夫ですか。嫌なら言ってくださいね」


「うん、ありがとう」


 わたしのピンクの水着をゆっくりと取っていく。あっ、思わず声に出してしまった。誰にも見せたこともないものが人目に晒される。スタッフは真剣な目でわたしを撮影していた。


「この現場はね。女優さんを輝かせるために、そしてそれを見た視聴さんが妄想を抱けるためにやってるんだよ」


 あっという間に水着のパンツをサッと取られる。


「こう言うのは焦らすと恥ずかしくなるからね」


 ヌードの撮影が終わると個室に移動する。歩きながら、るりはわたしに説明してくれた。


「これから本番の絡みがあるからね。絡みと言っても別に言われるようにすればいいだけだから安心してね」


 部屋はベッドの方だけ見るとワンルームのマンションにも見えるが、反対側を見ると監督と数人の撮影スタッフがわたしを撮影するために何人もカメラを向けていた。動画撮影もだが、パッケージ写真も必要になるからだろう。たくさんのカメラがわたしを狙っていた。


「はじめまして、だね」


「えっ!?」


 遠くで見てたから分からなかったけれども、わたしは男優の顔を知っていた。


「坂本雄二じゃん、どうしたの?」


「男優やってるんだよ」


「えーっ、雄二が意外だね」


 高校の時の記憶が蘇る。わたしは雄二に告白され、断ったんだ。アイドル活動しか考えられないとあの時は思っていた。


「あのさ、初めてだから知ってる奴の方が良いって言われたからさ」


「うん、その方が安心するかな」


「その……処女って本当か?」


「うん、そう……だよ……」


「分かった。痛かったら、本番なしもできるからね」


「えっ、そんなことできるの?」


「擬似って言って女優さんが体調悪い時とかにするんだけどね」


「分かったよ。とりあえず普通で、……頑張るよ」


「オッケー、オッケー」


 わたしはベッドに横になり、雄二が上になった。先ほど着たばかりの撮影用の服を脱がされていく。なんか脱がされるために着たのが少しおかしかった。


「どうした? 俺の顔変か?」


「そうじゃないよ。だってさ、この服色々選んだのに脱ぐためだけじゃん」


「視聴者優先だからね。俺と知り合いというのも明らかにはされないよ」


「そんなもんなんだ」


「知らない男に脱がされる方が興奮するみたいだからね」


「よく分からないや。女目線なら、好きな男の人に脱がされる方がよっぽど興奮するけどね」


「激しいプレイがあるのもそんな理由だよ」


 話している内容は収録されないと、緊張をほぐす為色々と話してくれた。


 初めては簡単に奪われた。血は少し出たけど思ってたほどは痛くはなかった。


 それから、男優が交代して知らない男優何人かと同じプレイをした。やる事は同じなんだな、と不思議な気がした。


「男の人は同じプレイをしてても興奮するもんなんですか?」


「俺は興味ないけど、汚されていくのが興奮するらしい」


「汚されていくんですか?」


 わたしが真面目な顔で男優さんに聞くので、ぷっと吹き出した。


「イメージ優先だからね。女性像って言うのかな。こんな可愛い娘がこんなことを見たいなのかね」


「どんなに可愛くてもやる事は一緒だと思いますけども……」


「男にとって自分の手が届かないと感じられる綺麗な娘が汚されていくと感じるのは興味惹かれるらしいね。まあ、趣味はよくないけどね」


「へえ、そんなもんなんか」


「なんか、サバサバしてるね」


「悔やんでも仕方ないし、この業界で頑張ってみようと決めたのはわたしだし」


「そっか。じゃあ、頑張れよ。俺たち男優は君たちを光らせるために存在するからさ。もう会えるかどうか分からないけど、応援してるよ」


「じゃあ、一本買ってよ」


「分かった、分かった。俺が買わなくても売れると思うけどな」


 笑いながら撮影所から去っていった。なんか思っていたのと違うな。性が開けっぴろげと言うか、そんな感じがした。


 撮影全てが終わったのは8時を少し過ぎた頃だった。みんな早かったと言ってたけども、わたしにはそんなものなんだ、と感じたくらいだった。


「疲れてるだろう。送るよ」


 マネージャーの悠一がこちらに向かって走ってきた。確かに足がガクガクしててここから歩いて帰るのは正直辛かった。


 シャワーを浴びてメイクをしながらテレビを見ているとニュース速報が流れた。


「えっ、なんで……」


 速報は芸能人婚約のニュースだった。テロップを見た瞬間わたしは凍りついた。


「朝倉竜司さんのお相手は今を輝く、本田祐美さんですが、これまで二人はどうやって婚約までの道のりを歩んで来たのでしょう」


 なんなの、これ……。朝倉竜司って、嘘でしょ。なんでよ、こんな事あるはずがない!!!


 わたしはすぐにでも未来のところに行かなければ、と思った。



――――――


いかがでしょうか。

エロを重視すると消されかねないので兼ね合いを考えて書いてます。


今後ともよろしくお願いします。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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