第2話 託されたもの

アカツキさんは俺と手を握って何かを託した。

 何かを受け取ったと思った瞬間、アカツキさんはやり切ったように手を放し、炎に包まれた。

「アカツキさん!」

 その声を聞いて、鎌を持った少女が駆け寄ってきて、炎を消そうと試みていた。

「消火器とか……」

 周りを見渡しても消火器はない。

「どうすれば……」

「アカツキ!」

 少女は炎の中に手を伸ばしていた。

「危ないって!」

 俺は少女の腕を掴み、引き戻した。

 彼女の腕に触れた瞬間、彼女の焦りの感情が流れ出してきた。

「な、何だこれ……?」

「水魔法が使えたら……」

「魔法……?」

「あなたは関係ない」

「いや、俺、アカツキさんから何か託されたんだよ!」

「託された……? まさか……」


 その時、頬にぽつりと水滴がついた。

「雨……?」 

 最初は小雨程度だったが、どんどん雨脚は強まって、土砂降りになった。

「協会の大規模水魔法……」

「何だそれ」

「一般人には教えない」 

 

 炎は雨によって鎮火されていった。

 黒く焦げたアカツキさんは、既に息を引き取っていた。


 少女はスマホを取り出し、何処かに電話をかけた。淡々と状況を伝えている。

「棺を一つ」

 その言葉だけは震えているように聞こえた。


「あ、あのさ、君とアカツキさんは仲間なんだよね?」

「うん」

「俺に何か出来ることはあるかな? アカツキさんに託されたものが何なのか知りたい」

「死の間際に託すのは異能力くらい」

「異能力?」

「アカツキの異能力はサイコメトリー。触れたものの思念を読み取る能力」

「それを俺に託したってことか?」

「試してみる。……私が今から何か図形を思い浮かべるから、それを当てて」

「分かった」

 少女は手を差し出す。俺はそれを軽く握る。すると、頭の中に図形が浮かんできた。

「星か?」

「正解」

 この後、二、三、同じことを繰り返したが、全て的中させた。

「やっぱり異能力譲渡されてる」

「そうか」

 俺に変な能力が備わっているなんて、まだ信じられなかった。


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