第26話 ドリアード
弓矢を向けられて硬直している私たちの状況が一変するのにはそう時間はかからなかった。
携えていた矢に向かって矢が飛んでくるという離れ業が突如起こったのだ。
「お前は私たちの客人に何をしている。無作法にもほどがあるじゃろ」
現れたのは老人言葉で話す30歳くらいのエルフだった。そのエルフも弓を構えており、先ほどの矢を放ったのは彼だというのがなんとなくわかった。そしてそのエルフの後ろにはエルフの長を呼びに行ったと思われるエルフが付いてきている。
「それでお嬢さん。今はどんな状況なのかな?」
「それは私が説明するわ。彼女から妖精の気配を感じて、あなたたちとの生活にも飽きてきたところだったから彼女にテイムしてもらってついていこうかと思っていたのよ。それでそのエルフが怒って弓矢を向けたってわけ」
「それは無作法をしました。え~と」
「あ。私は清美と言います」
「それはどうも。私はエルフの長をしている。エルドラードと申します。それで清美さんはテイムを使用できるのですか?妖精相手にテイムをできるとは聞いたことがないのですが」
「私もよく分かっていませんが、ハーフリンク、ピクシー、ドワーフ、ウルフの4種族をテイムしています。それに私のテイムはその関係者まで一度にテイムしてしまうのでどのくらい影響が出るのかがわかりません」
「分かりました。それでドリアードは世界樹の世話はどうするのですか?」
「他の妖精たちが育ってきているから任せてしまおうかと思ったのだけれど、清美の話を聞くに他の同属もテイムされてしまうみたいね。それで清美。テイムされたものはどれくらい離れられるの?」
「えーと。今も拠点にいる人もいますし、ダンジョンの外に出ている人もいるのでどれくらいと言われても分かりません」
「あら。それなら私と一緒に皆テイムしてもらおうかしら。別に困ったことにはならなそうだしいいでしょ?」
「それは構いませんが、私たちが来た目的はエルフの皆さんのご助力が欲しかったからなのですが・・・」
「あら。それならいいわよね。エルドラード。私が行くところなのだから恩返しに助けてあげなさい」
「まあ。ドリアードが言うなら助けることもやぶさかではないが。具体的にはどうしたらいいのだ?」
「実はダンジョンの外にオークやオーガが出没するダンジョンがありまして、そこを囲むように砦を建設しようとしているのです。しかし、私たちダンジョンの外の世界では魔法がうまく使えないらしいのでエルフの皆さんには土木作業のお手伝いをお願いしたいのです」
「あら。それならエルフじゃなくても私の配下のノームを連れていけばすむ話じゃない。清美が私の面倒を見てくれるのであれば喜んで手伝わせてもらうわよ」
エルフに会いに来たのにも関わらず、エルフ抜きで話がとんとん拍子に進むことに何か納得のいかない私であった。
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