第25話 妖精
私はダンジョンから出ていく人たちを見送った後、リン君にここに来た本題を話す。
「リン君。実は第2ダンジョンの砦建設で人手が足りないみたいでね。魔法を使えるエルフに協力を求めてほしいみたいなの。だからエルフの所まで案内してくれないかな?」
「案内するのは構いませんが、エルフは排他的で協力してくれるかはわかりませんよ」
「ドワーフの人たちから聞いた話ではそんな感じはしなかったんだけどな~。まあ行ってみないことには分からないしとりあえず案内だけはお願いするね」
「分かりました。エルフのいるところはここから南にある森の中です。護衛はウルフで問題ないですよ。というかこの辺りにはウルフの集団を相手にできる存在がいませんので」
私たちは片道3時間ほど南へ下った。道のりは木の根などが邪魔で順調な道のりとはいかなかったがウルフたちは毎度のごとく子供たちに狩りの練習をさせる程度には安定した道中だった。
そして、大きな木が見えたかと思うと。
「それ以上こちらに来るなら容赦なく打つ」
私たちは声のした方向、木の枝をみると1人のエルフが弓に矢をつがえてこちらに狙いを定めていた。なぜ私がエルフと分かったかというとファンタジーの定番で耳がとがっていたからだ。ちなみに中性的な顔立ちで男女の区別は付かなかった。
「私はここから北に集落を構えるハーフリンクです。実はエルフの皆様に助力を頼みたく、ここまで来させていただきました。可能であれば長と話をしたいのですが可能でしょうか」
エルフは警戒しながらも弓矢をおろしてくれた。そして口笛を吹くとエルフの集団がこちらへやってきた。警戒されていることにはかわりないが、1人のエルフが大きな木へ向かって駆けだしたので話をするつもりではありそうだなと考えていると。
「人間さんはテイマーなの?妖精の気配がするけれどなんで?」
いままでずっと上を見つめていたので気づかなかったが地面には子供が木の葉の洋服を着てこちらを見つめていた。
「私はテイマーだよ。妖精の気配はピクシーをテイムしているからかな?」
「ドリアード様。人間に近づいてはいけません。攫われるかもしれません」
「大丈夫よ。この人はこの世界の人間ではないもの。だから私たちに欲望に染まった目を向けていないでしょ。この世界の住人と違って私たちの価値を知らないのよ」
話から察するにこの世界(ダンジョンの中)にも人間がいるようだ。だがあったこともないので協力を得られないし、話を聞く限り私の世界より治安が悪そうだ。
「ドリアード様はなぜ私に話しかけたのですか?」
「さっきも言ったけれど妖精の気配を感じたからよ。それで私も連れて行ってくれないかしら」
その言葉を聞いたエルフはおろしていた弓矢を私に向けた。私は両手をあげて何もしないことをアピールすることしかできなかった。
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