第503話 アリリシャは語る
元々冒険者ギルドに登録していたアリリシャは、その実力を買われ、ベルソード家の私兵として雇われている。ノノノカ自身が見出した若き才能だ。
当然ながらノノノカからも厚い信頼を受け、一般の冒険者よりも周囲の情報に明るい。
冨岡がノノノカの娘の子であることも、ノノノカ自身から話を聞いていた。つまり、孫であるという認識はしている。けれど、孫の存在によって、ノノノカがこれほどまでに丸くなるとは思っていなかった。
アリリシャは語る。『ノノノカは誰よりも信頼できるボスである』と。
冒険者にとって、信頼すべきは何を置いても実力だ。背中を預けるに足るか、という尺度以外にない。個人ではこの国最強と名高いノノノカは、最も信頼できる人物であるということだ。
だからこそ、傍若無人な行いも、移ろいやすい思考も、天上天下唯我独尊な振る舞いも全て許される。彼女を咎められるのは、彼女よりも強い者だけだ。
そして、冨岡に出会うまでのノノノカは、正しく『鬼』であった。自身の正義に基づき、悪は容赦無く叩く。
戦場においては判断ミスは『イコール死』だと考えているが故に、他人のミスに厳しい。それもまた信頼できる要素の一つである。
自分の指示から外れた者を許したことなど、少なくともアリリシャが知る限りはない。
そんなノノノカが、ドロフとメレブの怪我を『自分の甘さ』であると自省している。
アリリシャにとっては、言葉が詰まるほどに驚くべきことだった。それほどまでに冨岡の存在は大きいのだ、と認識する。
「アリリシャ、何を不思議そうな顔をしておるんじゃ。それよりもワシに報告すべきことがあるじゃろう」
ノノノカにそう言われたアリリシャは、驚きに飲まれた思考力を引っ張り出し、慌てて言葉を返す。
「は、はい! トミオカ様のことですね」
「そうじゃ、ヒロヤの姿が見えん。もしや、一人で王弟派の奴らのところに向かったのではあるまいな?」
「いえ、トミオカ様が戦場に赴くのであれば、私が離れることはありません。トミオカ様は『ブチギレた』と」
冨岡の言葉をそのままノノノカに伝える。その言葉の意味がわからず、幼い容姿を持つ国内最強のボスは首を傾げた。
「ブチギレた?」
「おそらく、強い怒りのことかと・・・・・・そして、この場から離れるのでトミオカ様がいない間、学園を守るよう言い付けられております」
「ふむ、何か考えがありこの場を離れたか。その上、学園で待っているように、と。ワシらが勝手に動かぬようにそう言ったのじゃろうな。何をするのかはわからんが、ワシの孫じゃ。馬鹿な真似はせんじゃろう。この状況では無理に動くのは得策ではないしの。仕方あるまい、学園に戻るとするか」
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