第398話 冨岡に電流走る

 その後全てのバーベキューセットに火が入り、いくつかの机を用意したところで、工事現場からミルコが歩いてきた。


「おーい、トミオカさん。これは一体なんだ? 祭りでも始める気か?」


 メレブの持っていた氷雪系魔法で缶ビールを冷やすよう指示をしていた冨岡は、ミルコの声に気づいて振り返る。


「ああ、ミルコ。新しい従業員が入ったので、歓迎会をしようかと思って準備してたんだ。せっかく酒を飲むので、学園改装してくれている人たちも飲み食いできるように、こんな感じにしてみました」


 説明されたミルコは酒と料理、大量の肉が並ぶのを確認した。


「すごい量だな。って、そういうことするなら事前に教えておいてくれよ。こっちからも酒とか用意するのに」

「結構用意しておいたんだけど、足りないかな?」

「こういうもんは、余るくらいがちょうどいいんだ。よし、じゃあ、俺からも追加させてもらおうかな」


 そう言ってからミルコは近くにいた作業員に声をかける。

 おそらく金が入っているであろう皮袋を手渡して、酒と肉を買ってくるように指示。それに加えて、工事現場中に今日は飲み会をする、と伝えるように言う。

 冨岡としては、自分が主催するのでその分の費用は持つつもりだった。そのため、ミルコが金を出したことに申し訳なさを感じる。


「大丈夫ですか、ミルコ。追加の酒や肉っていっても結構な金額になるんじゃないのか?」

「心配しなくてもいいって、トミオカさん。こういう工事の現場には、元々親交を深める飲み代も費用に含まれているんだ。大工ってのは危険もある仕事だからな、仲間意識や連携ってのは不可欠だろ。けど、これだけ大きな現場だ。全員を集めるだけでも一苦労でな、中々そういう機会を作れずにいた。ちょうどいいって言い方も変だが、せっかくだし俺も便乗させてくれよ」

「そうか、そういうことなら」


 冨岡はミルコにそう答えてから、これだけの人数が集まるのだから小さな祭りと呼んでもいいくらいだな、と微笑む。


「祭り・・・・・・祭りか。あ、いいこと思いついた」


 そんなことを思いついても実行する者なのいないだろう。けれど冨岡はその思いつきをどうしても止められなかった。

 即座に冨岡は行動に移る。


「レボルさん、ちょっと俺、出てきますね! 肉を焼くの任せてもいいですか? すぐ戻ってくるので、乾杯は待っていてください!」

「トミオカさん? どうしたんですか、もう準備は終わってるんですから、あとは食べるだけですよ。ミルコさんからの追加の食材もありますし」

「すぐですから!」

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