第344話 異世界の教育
これまでこちらの世界で生活してきた冨岡は、どの程度勉強が広がっているのかを肌で感じている。
ほとんどの店に看板やメニューがあることから、識字率は高いと考えていい。つまり文字が読める人間は多いはずだ。
また、手紙という文化が根付いているので書く方も問題はない。
これは親が子に教えることが多いらしく、家庭環境によっては読み書きが出来ない者も少ないがいる。
義務教育課程が存在しないので、同じ年齢であれば同程度の学びを得ている、というわけではないのだ。貧富と受けた教育のレベルはほぼ比例すると考えていい。
続いて計算だが、簡単な足し算や引き算はほとんどの人間ができる。しかし、大きな計算や掛け算、割り算といったものはそれほど浸透しておらず、商人や貴族以外では学ぶことも少ないようだ。仕事において計算を使う職人は大人になってから学ぶこともあるという。
その他、社会科目に相当する政治や経済については貴族しか学ばない。庶民が余計な知識を得ることについて、貴族が嫌悪を示す可能性もあるため、専門の教師というのも貴族の中にしかいないだろう。
都合上、理科科目に置き換えた魔法だが、これは個人によって大きな差がある。才能も大きく関わってくる内容だが、教育レベルという話ではやはり貴族の方が高い。
高名な魔法使いを雇い、何十年もかけて培ったノウハウを全て教えるのだから、庶民よりも成長しやすいだろう。
つまりだ。
読み書きはともかく、他の科目に関して教鞭を取るのならば、貴族が適任だろう。アメリアの言葉はそれを意味していた。
冨岡はそれを理解して頷く。
「確かにそうですね。それほどの知識を持った人となれば貴族様ってことになるでしょう。しかし、学園に関しては貴族様からの反発を受ける可能性がある。それに貴族様を雇うなんて大それたことできないだろうし、したくない。そこで、キュルケース家執事のダルクさんに相談したんですよ」
「ダルクさんに? 貴族様を紹介してもらうとかではないですよね?」
「ははっ、もちろんですよ。キュルケース家からなら貴族様を紹介してもらえるんでしょうけど、流石にと思って、他の方法を」
貴族を雇う以外の方法。
冨岡はダルクから得た知恵を得意げに披露する。
「貴族様に勉強を教えるのは誰か。それは家庭教師です。爵位は持っていないですが、庶民でもない方々ですね。代々知識を受け継ぎ、貴族様に教育を施す研究職。魔王の話の中で出てきた魔法の研究所も、家庭教師に属するんですよね? もちろん、家庭教師も庶民が雇えるような人ではないのですが、抜け道があるんです」
「抜け道、ですか?」
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