第343話 可能性を学ぶ場所

 その他にも、冨岡は従業員の募集を考えている。


「あとは学園の教師を探したいと思っているんですよ」

「教師・・・・・・ですか?」


 アメリアに聞き返され、冨岡は棚からフィーネ用の教科書を取り出した。


「俺の国では、主に五つの教科を学ぶんです。国語、算数、理科、社会、外国語。簡単な勉強なら一人で教えることもできますけど、専門的な勉強となればそれぞれに教師が必要です」

「外国語って、今私たちが話している『世界共通語』以外の言語ってことですか?」


 彼女の言葉から察するに、アメリアが話している言葉も冨岡が日本語のままで話している言葉も全て『世界共通語』と呼ぶらしい。

 また世界共通というのだから、他の国でも同じ言葉を話しているのだろう。


「えーっと、そうですね。ほら、古い言葉とか」


 苦し紛れに返す冨岡。古語ならば国語で学べばいいだろう。外国語という科目は必要ない。

 更に冨岡は言葉を続ける。


「一旦外国語は置いておいて、読み書きの教師、計算の教師、理科は・・・・・・そうですね、魔法の教師、社会は政治や経済について詳しい教師を探したいところです」

「すごい! それだけ学べばどのような道でも生きていくことができますね。また少しだけトミオカさんが作りたい学園がわかってきました。子どもたちに未来を選択する自由を、ってことですね?」


 アメリアの理解に思わず冨岡は笑みを浮かべた。


「子どもたちはまだまだ成長途中です。生きていく中で、自分のやりたいことが見つかるかもしれません。そのために幅広く学んでほしいんですよ。まぁ、大人になってからアレは必要なかったなんて思う勉強もあるかもしれませんが」


 言いながら、冨岡は自分の過去を思い出す。

 学生時代、苦手な数学の勉強をしながら『これが社会で何の役に立つのか』なんて考えていた。実際、大人になってからも役に立ったとは思わない。

 けれどそれを学んだおかげで、苦手なことにも向き合う姿勢を持つことができた。また『自分には向いていない』という理解も得られる。

 ありきたりな言葉だけど、と思いながらも冨岡はその言葉を口にした。


「知識はどれだけ持っていても荷物になりません。俺はこの学園をそんな場所にしたいんです。だから学園始動前に教師を集めることは必須」

「トミオカさんの理想を叶えるなら、それなりに知識を持った方が必要になりますね。そうなると、高等教育を受けた方・・・・・・貴族様を雇わないといけないかもしれません。少し、いえかなり難しいですけど」

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