第335話 謎のち謎
勇者、賢者、聖女。冨岡とアメリアは一瞬でその言葉に反応する。
「聖女・・・・・・」
「それって」
二人の視線はフィーネに向き、過去のトラブルを思い出した。
移動販売『ピース』を始動させたばかりの頃、冨岡が刺された事件。その時、彼の命を救ったのはフィーネだった。聖女の奇跡と呼ばれる魔法で、傷を癒やし身を守ったのである。
そのことからもフィーネに、聖女の素養があるのは間違いなかった。
ようやく冨岡は頷く。
「そっか・・・・・・そういうことか。レボルさん、そもそも選ばれし者って一体何に選ばれた人々なんですか?」
「何に・・・・・・そんなことを考える人はそういないでしょう。単純にそう呼ばれているだけです。ただあえて言うのであれば、運命に・・・・・・でしょうかね。選ばれし者は運命に翻弄されるそうですから」
「だからフィーネちゃんにだけ赤い光が」
まるで疑問符が飛び移ったかのように、次はレボルが首を傾げた。
「どういうことですか? まるで、フィーネちゃんが聖女の血を引いているかのように聞こえますが」
そう尋ねられた冨岡は言葉にはせず、黙って首を縦に振る。
わざわざフィーネに実の親を連想させるような話を聴かせたくはない。そんな配慮が伝わったのか、レボルは疑問を飲み込み、一旦そういうものだと思うようにした。
その上で彼は話を進めるべく、口を開いた。
「ともかく、フィーネちゃんにだけ見えている赤い光を魔力痕と仮定することはできそうですね。となれば、何かしら魔法が発動されたはず。フィーネちゃん、光は地面から空に伸びているんですよね? そこから先はどうなっていますか?」
レボルに問いかけられたフィーネは、再び指で示す。
「えっとね空まで伸びて、向こうの方にぐーんって」
「東へ・・・・・・街から出ていく方向ですね」
魔力痕の位置を確認したレボルは、自分の顎に触れながら思考を巡らせた。
「それを魔力痕と仮定し、この場で魔法が発動されたとするのなら、起きた事象は『その魔石が届いた』ことでしょう。配達員を見ていないんじゃなく、配達員は姿がなかった・・・・・・魔法で届けられたものなら見えなくて当然です。わざわざ魔法で届けるなんて、より一層謎が深まりましたね」
結局、魔石を超えた魔石が誰から届いたものなのか分からず、その目的も不明。
さらに魔法を使って届けられたことで、不可解さが増した。
その状況が少し怖くなり、アメリアは魔石を布の上に置く。
「と、とにかく、今はこの布で包んでおきましょう。そうすれば魔力を隠すことはできますから」
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