第325話 学園完成目前
全ては順調に進んでいる。
冨岡は学園づくりの進捗状況を確かめ、教会の中庭に停車させている屋台の中で満足げに頷いた。
リオを引き取ってから数週間。様々なことが一気に進んでいた。
細かいことから説明すると、まずは原動機付自転車の導入である。簡単にいうと原付。
これは商売拡大のために元の世界から持ち込んだものである。
美作という何でも屋に頼み、購入し運搬してもらった。
自転車すらない異世界にエンジンによって動く原付を持ち込んだのだから、最初はアメリアたちに目が飛び出るほど驚かれた。
しかし、この世界にも解明されていない『古代超技術』なるものが存在しているらしく、気がつけば受け入れられている。
「トミオカさん、少し原付の練習をしてきます」
既に夕方。貧民街での配布を終え、教会に戻ってきたところでレボルが原付に乗った。
これから先、屋台を任せるとすればレボルになるだろう。責任者として原付の乗り方をマスターしておかなければ、料理の配達事業を進められない。
その為の練習だ。
ボボボボとエンジン音を響かせ、街中に向かっていくレボルの背中を見送って冨岡は教会の方に視線を送る。
「結構、進んでるなぁ」
トントンカンカン。金槌の音が響いていた。
ミルコによって書かれた図面と、キュルケース家から出された資金。街中から集められた職人たちが夕日の光を頼りに作業を進めている。
教会から学園への改装だ。
職人たちの中にはブルーノの姿がある。そして屋台の中では、彼の息子アレックスが夕食を食べていた。
数週間前とは比べ物にならないほど顔色が良く、痩せ細っていた体は限りなく健康体に近づいている。
同じ机でアメリアとフィーネも夕食を口にしていた。
原付の導入と学園づくりのための工事。進んだのはそれだけではない。
それについてアメリアが水を飲んでから話し始める。
「そういえば、トミオカさん。二つ目の屋台・・・・・・移動販売『ピース』二号店の従業員さんは見つかったんですよね?」
そう、今冨岡たちがいる屋台の隣に全く同じ形の屋台を停めているのだが、それが移動販売『ピース』二号店だ。
事業を拡大し、収入を増やすために新しく屋台を購入して持ち込んだものである。
そして、そこで働いてくれる従業員も既に探してあった。
「ええ、レボルさんの紹介で元々飲食店で働いていた男性を二人。料理の腕は折り紙付きですよ。二人ともレボルさんの弟子のようなものらしいので、身元もしっかりしています」
「レボルさんが修行していたお店で働いていた人たちなんですよね? それは安心です」
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