第323話 リオの疑問
あからさまに古風な服装しているレボルが、スタンガンなんて現代の品物を持っている様は、違和感満載で少し可笑しい。
見えなくなるところまで手を振り続けるサーニャを見送って、冨岡たちは屋台に戻った。
「さて、それじゃあ片付けますかね。明日の仕込みもやってしまいます」
冨岡は腕捲りをしながらアメリアに言う。
するとアメリアは自分も手伝うと言わんばかりに、全員分のお椀を重ね始めた。そこで冨岡は目線でリオを指す。
まだここに来たばかりで不安なはずのリオ。そんな彼を置いて大人が二人とも作業するわけにはいかないだろう。
即座に理解したアメリアは、黙って頷きリオの隣に座った。
「そういえば、食後に甘いものを出してくれるってトミオカさんが言ってましたね。楽しみに待っていましょうね」
アメリアがそう話すと、リオはどう反応すればいいのかわからない様子で答える。
「・・・・・・えっと、甘いものって果物とか?」
「普通はそう思いますよね。でも、トミオカさんが出してくれる甘いものは果物じゃないことが多いんですよ。チョコレート? とか」
二度と出さないぞ、チョコレートは。
アメリアの言葉を聞いていた冨岡は、苦笑しながら戸棚を探る。
備蓄している菓子類の中からクッキーを取り出した。当然チョコチップなどが入っていないものである。
それほどまでにチョコレートを食べさせるわけにはいかない。
クッキーを用意すると、冨岡は後片付けに戻る。
「鍋がちょっと余ってるから、明日の朝、雑炊にしようかな」
明日の朝食を決定しつつ使用したお椀を洗ってしまう。
その間、アメリアはリオの緊張を解くために、優しく微笑みながら会話をしていた。
「どうです? トミオカさんが出してくれるお菓子は、頬が落ちそうになるほど美味しいでしょう?」
「う、うん、すごく・・・・・・甘い。こんなの食べたことないや」
まだ慣れない様子ながらもクッキーの味には感動しているリオ。
その向かい側に座っているフィーネが嬉しそうに身を乗り出す。
「でしょでしょ! 食べたことない美味しいをいっぱいくれるんだよ、トミオカさん」
フィーネの言葉を聞き、リオは冨岡の背中に目を向けた。
そういえば、この人は何者なのだろうか。リオはそんな疑問を抱く。
話を聞く限り、この教会の職員ではなさそうだ。お金持ちが屋台を営み、アメリアに仕事を与えている。しかし、それだけにしては親しげだ。
まるで家族のような雰囲気がある。
考えた末にリオはこんな結論を出した。
「もしかして、トミオカさんってアメリア先生の恋人?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます