第309話 アメリアの姉
その声に反応して冨岡もそちらに視線を送ると、見慣れない白い上下の服を着た女性と、その隣にフィーネと同い年くらいの男の子が立っていた。
女性の方は健康的な小麦色の肌で、活発そうなイメージを受ける。年齢は冨岡よりも少し上くらいで、三十代前半くらいだろうか。白い上下の服は、おそらくシスターをイメージしたようなものになっているのだろうが、豊満な胸が詰め込まれている様が背徳的に感じてしまう。
男の子はボサボサの金髪で、彼は周りに敵しかいないと主張するようにこちらを睨みつけている。
「サーニャ!」
まるで進学のため地元を出ていった友達に再会したかのようなテンションで、アメリアは女性に手を振った。
サーニャと呼ばれた女性もまた再会を喜ぶように笑顔を見せる。
「久しぶりだね、アメリア」
ハスキーで色っぽい声は、耳の奥をくすぐるように入り込んできた。
二人の再会を屋台の中から見ていた冨岡は、新しくここに住む子を連れてきたのだ、と理解してアメリアと一緒に外に出る。
だが、新しい子を連れてくるのはもう少し年上の人だと思っていた冨岡。
イメージとの乖離に首を傾げていると、アメリアが察して補足する。
「サーニャもここで過ごしていたんです。職員として他の施設に移ってしまったんですけど、私にとってお姉さんみたいな存在なんですよ」
大人しそうなアメリアとはタイプの違うサーニャ。だからこそ仲良く、姉妹のように育ったのだろう。
サーニャは冨岡に気づくと、男の子の手を優しく引いて近寄ってきた。
「キミがトミオカさん?」
「あ、はい」
戸惑いながら冨岡が返事をすると、サーニャは長い赤毛を押さえながら頭を下げる。
「初めまして、サーニャ・フルホッジでっす。アメリアからは手紙で教えてもらってるよ。キミがアメリアとフィーネを助けてくれたんだってね。こんなに立派な屋台まで作って、安定した収入を得てくれているんだろ?」
「助けた、だなんてそんな。俺は俺のしたいようにしているだけですよ」
「ははっ、いい男だねぇ、キミは。そう言ってくれれば、私としても安心だ。まぁ、姉として一つ言っておきたいことがあるとすれば、アメリアはまだ乙女だからねぇ。あんまり無茶なことはしないでおくれ? 優しく、まずは手を繋ぐところから」
あっけらかんとアメリアについて語ろうとするサーニャ。
すると、顔を真っ赤にしたアメリアが冨岡との間に割り込んだ。
「何言ってるの、サーニャ! 変なこと言わないでよ! トミオカさんも耳を塞いでてください」
言いながらアメリアは自分の両手で冨岡の耳を塞ぐ。
その体勢が今から口づけをする時のそれと類似しており、サーニャが笑った。
「それは積極的すぎないかい、アメリア」
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