第252話 枯れ木のような手足
周囲の住民と変わらず、痩せこけた男の子だ。年齢はフィーネとそう変わらないだろう。
手足は枯れ木の枝の如く、簡単に折れてしまいそうだった。
体についた汚れなど気にしていないという雰囲気から、清潔さなど意識できないほど切迫した生活をしているのだろうと推測できる。
当然ながら、男の子の全身で気にならない箇所はなかったのだが、特に気になるのは右腕にある大きな青痣。不健康なのは言うまでもないが、怪我までしている。
男の子は屋台を見つけると、気だるそうな体を必死に動かし、近づいてきた。
「今日もハンバーガーくれるの?」
冨岡を見上げながら男の子が問いかける。
肺を直接握られたかのような息苦しさを感じながら、冨岡は頷いた。
「あ、ああ、そうだよ。すぐに準備するからちょっと待っててね」
そう答えてから冨岡は屋台を停止させる。
屋台の中で停止を感じ取ったアメリアは、カウンターから顔を覗かせ冨岡に話しかけた。
「あ、トミオカさん。すみませんが、屋台は端に寄せてもらってもいいですか? その・・・・・・慈善活動とはいえ、不快に感じ怒ってくる人もいるので・・・・・・」
過去に何度も貧民街で活動を行ってきたアメリアの言葉だ。ここは従っておくべきだろう。
冨岡は即座に屋台を端に寄せ、カウンターからアメリアに話しかけた。
「通行の邪魔にならなくて、家の出入り口でもない場所に止めました。これでいいですか?」
「はい! 大丈夫だと思います。こちらも移動中にハンバーグを焼いておいたので、すぐに配れますよ」
「ありがとうございます。既に男の子が来ているので、すぐに渡してあげましょう」
冨岡の言葉を聞いたアメリアは、身を乗り出して男の子の姿を確認した。
「ああ、昨日も来ていた子ですね。覚えててくれたみたいです。私も気になっていたんですよ。怪我をしているみたいだし、家があるはずなのに道に座り込んでいて」
そこで冨岡はアメリアの話した違和感に気づく。他にも座り込んでいる人がいたため、気にしていなかったが、座り込んでいる子どもはこの子だけだ。
その前提で見渡してみると、座り込んでいる者たちは仕事を探しているか、家がないため道端に藁を敷いて生活している形跡があった。
しかし、この子は何もない道端に座り込んで縮こまっていたのである。
「トミオカさん、聞いてますか?」
思案によって手を止めていた冨岡は、屋台の中からレボルに声をかけられた。
「あ、はい、すみません。何ですか?」
「せっかくなので積んである食材を使い、簡単なスープを作ってもいいでしょうか? と確認したんです。ハンバーガーだけでは足りないかもしれないと思いまして」
実際に貧民街を目の当たりにしたレボルの提案。
料理人がやる気になっているのなら止める理由はない。
「もちろんです。ぜひお願いしますよ」
そういえば酒を飲んでいたはずじゃなかったか、と思いながらも冨岡は了承する。
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