第233話 教会の今後

 冨岡から飲むように促されたアメリアとフィーネは、顔を見合わせてから恐る恐るカップに口をつける。

 ミルクティーを一口含むと茶葉の香りが鼻を抜け、舌の上に甘さと濃いめに淹れた紅茶の旨みが広がった。ミルクティーにしている分クセが少なく、慣れていない者でも飲みやすい。


「ん!」


 まだ飲み込む前から、好反応を示すアメリア。フィーネに至ってはリアクションもせずにミルクティーを飲み干した。


「これ美味しい!」


 飲み終わってから目を見開いて感想を述べるフィーネ。よほど口に合ったのだろう。

 少し遅れてアメリアも美味を表すように微笑んだ。


「本当に美味しいですね。初めての味でしたが、なんというか旨みが強くて・・・・・・お茶とは思えません」

「ははっ、そうですね。俺もミルクティーはお茶というより甘味というイメージがあります。でもそれほどクドくなくてクッキーにも合うんですよ」


 冨岡はそう言いながらクッキーを差し出す。

 アメリアとフィーネがクッキーに手を伸ばし、ミルクティーとの相性を楽しみ始めたところで冨岡は話を切り出した。


「食べながらでいいので、少し聞いてほしい話があって」

「なんですか?」


 クッキーを手に持ちながらアメリアが問いかけると、冨岡は言いにくそうにしながら本題に入る。


「えっと、その・・・・・・あまりいい話ではないのですが、順番に説明しますね」

「はい、お願いします?」

「今日、店に突撃してきた男・・・・・・ミルコのことなんですけど。実は大工だったんです、ミルコ」

「そうだったんですね。職人さんでしたか」


 まだ話の全容が見えず当たり障りのない返答をするアメリア。

 冨岡はさらに話を続けた。


「勝手にで申し訳ないのですが、そのミルコに聞いてみたんです。この教会がどれくらい保つか、って」

「この教会が・・・・・・確かに心配になりますよね。この通り、古くなっていますから」

「すみません、勝手に」

「いえ、この教会を気にしてくれているってことですから。それで、結果はどうでしたか?」

「ミルコが言うには、このまま何もしなければフィーネちゃんが大人になる前に崩れるだろうって話でした。ずっと住み続けるのは危険だろう、と」


 教会について本職の意見を又聞きしたアメリアは一瞬顔を伏せる。当たり前だが、自分が借金をしてまで買い取り大切にしていた場所なのだからショックだろう。

 それでも彼女は顔をあげて優しく微笑んだ。


「そう・・・・・・ですか。仕方ないですね。建ててからかなりの時間が経っていますし・・・・・・いつかはどうにかしなければなりませんでした」

「もちろん今すぐ崩れるって話じゃないですよ」

「ならお金を貯めなければいけませんね」


 前向きに話すアメリアに冨岡は「それでなんですけど」と言葉を続ける。


「金貨二百枚から三百枚で建て替えることができそうなんです。ここから先、学園作りをするにしてもここが拠点となりますので、俺にとってもこの場所がなくなるのは辛く耐えられません。何より、アメリアさんやフィーネちゃんの家ですから。お金がなんとかなれば、建て替える方向で進めてもいいですか?」

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