第220話 受付嬢シルファ
冨岡の応対をしている受付嬢。彼女の名前はシルファ・ドミー。
冒険者ギルドに勤めて七年目の二十八歳。冒険者ギルドでの受付嬢は激務であるため入れ替えが激しい。その中、七年間も勤めている彼女はベテランと呼ばれる域に達していた。
その証拠にここまでの会話で、冨岡が初めて冒険者ギルドに訪れたのだと判断し、丁寧な説明を心がけていた。後々、何かしらのクレームにならないような対応である。
彼女のおかげもあり、冨岡は細かく理解しながら話すことができた。
「斡旋ですか。俺としてもその形が理想なので、先ほど話した内容で紹介してもらえますか?」
「かしこまりました。料理ができる護衛、でしたね。長期という話でしたが、どれくらいの期間でお考えでしょうか。その間、冒険者は他の依頼を受けることができません。事前にある程度決めておかなければ、不安が残るでしょうから」
シルファに期間を問われた冨岡は、少し考えてから「そうですね」と話し始める。
「期間を決めていないのが正直な話です。終身雇用という形で雇えればと思っています」
「シュウシンコヨウ?」
「あー、えっと、俺が商人をし続ける限り雇い続ける、という話です。冒険者をしてみたけれど、安定した生活を求めてる、みたいな人がいればいいんですが」
冨岡の説明を聞いたシルファは、手元の資料からおそらく冒険者の名前が羅列されているだろうものを眺め、目を通した。
素早く視線を動かし、一気に確認したところで冨岡に提案する。
「その条件であれば、直近で大きな依頼を受けていない冒険者がいいかと思います。大きな討伐依頼などを受けている冒険者は、一攫千金を狙うロマン型であることが多いですからね。また、これから成長し一攫千金を狙っている冒険者は徐々に討伐する魔物のランクをあげている傾向にあります。それらを除外すると、自分の限界を知り冒険者としてそこそこの暮らしを維持している若手か、ほとんど引退状況にあるベテランということになります。ほとんど引退と言っても、老後暮らしていけるほどの蓄えもなく、どこかで働くツテもない状況なので、喜んで依頼を受けると思いますよ」
言いながらシルファは名前が羅列してあるであろう資料に線を引いた。
おそらく冨岡にわかりやすいようにしてくれているのだろうが、当然ながら冨岡にはその文字が読めない。
そこで冨岡は文字が読めないことを悟られないよう、さらに条件を付け足す。
「では、その中で一番穏やかな方を紹介してもらえますか?」
「え、穏やか・・・・・・ですか。ご存知かと思いますが、冒険者は好戦的な性格が多く、それも能力の一つとして評価されます。相手に臆することがないですから。そうなると若手は除外になりますね。一番穏やかとなれば、この人でしょう。ちょうど、そこで飲んでいると思いますので今すぐご紹介できますよ」
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