第218話 冒険者ギルド

 広場でそんな約束を交わしたところで、屋台を置くために一度教会には戻る冨岡。

 教会の前でもアメリアたちに数時間の別れを惜しまれたのは言うまでもない。

 それは冨岡にとって、心の奥がこそばゆくも温かくなる瞬間だった。


 アメリアの手描き地図に従い、冨岡は冒険者ギルドに向かう。

 異世界というものに慣れてはきたものの、やはり冒険者ギルドと聞けば高揚するものだ。

 これぞファンタジー。これぞ異世界。

 

「この角を曲がってすぐの大きな建物」


 冨岡は地図を確認しながらアメリアの説明を思い出し、目の前を確認した。

 すると木造の大きな建物が、独特の存在感を放っている。

 

「これ・・・・・・だよな」


 入り口は大きめの扉になっており、その上には看板が掲げてあった。冨岡には読めない文字とおそらく水晶と剣を模した絵。

 中からはガヤガヤと人の声が聞こえてくる。

 周囲を確認しながら冨岡が扉を開けると、大勢の人が集まっている時特有の熱気が中から溢れてきた。

 ざっと見渡し冨岡は中の構造を把握する。

 右手一番奥には二階に上がる階段。そこから左に向けて長いカウンターと、数人の受付嬢。その奥にはいくつかの扉があった。カウンターより手前には、まるで酒場のように机が点在し、これぞ冒険者といったような風貌の者たちがそれぞれの机で酒を楽しんでいる。

 ガヤガヤと聞こえてきた声は酒を飲む冒険者たちのものだろう。


「酒場も兼ねているのか?」


 そんなことを呟きながら扉を閉める冨岡。屋台とはいえ飲食店を持っている冨岡としては、冒険者ギルドの中で酒を提供しているのが冒険者ギルド側なのか、それとも一般の店がこの中で許可を得て営業しているのか気になった。もしも一般の店ならば何か酒のつまみを売れるかもしれない。


「一応あとで確認してみるかな」

 

 そのまま冨岡は冒険者たちの間を抜け、カウンターに向かう。

 商店などとは違い、いらっしゃいませと出迎えられるわけもない。誰も冨岡が入ってきたことなど気にしてはいなかった。


「あの、すみません」


 冨岡が一人の受付嬢に話しかける。

 彼女は手元の書類を整理していたらしく、手を止めて冨岡に視線を向けた。

 赤毛の凛とした女性である。


「はい、なんでしょう」


 彼女はそう答えてから冨岡の容姿を確認し、どうみても冒険者ではないと判断。


「えっと、何かご依頼でしょうか?」


 依頼を受ける側ではなく、する側だと考え冨岡に問いかけた。

 話が早くて助かる、と冨岡は話を進める。


「あ、はい。こんな依頼をしていいのかわからないのですが、ある程度料理ができる護衛を雇いたいんです」

「護衛のご依頼ですね。条件として料理ができること・・・・・・これは珍しいですね。どこかの国へ移動されるまでの、ということでしょうか?」

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