第164話 二度揚げ
続いて、チャーハンの準備を進めていく。手始めに冨岡はネギを小口切り、既製品のチャーシューを細かく切り刻んだ。二つを別皿に置いて、レトルトの白飯を電子レンジで温める。この白飯はキュルケース公爵家でオムライスを作った時のものと同じだ。
そこまで終わったところで、フライパンを火にかけて油を引く。
白い煙が出るくらいまで十分に温めたところで溶き卵を投入。卵が固まらない程度に軽くかき混ぜてから白米、チャーシューを追加した。
卵が米の一粒一粒を包むようにしっかりと炒め、鶏がらスープの顆粒、塩、胡椒で味付けをしてから小口切りにしたネギを散らす。
それぞれの皿に盛り付ければチャーハンは完成だ。
チャーハンを作り終えた冨岡がオーブンを覗く。そこにはまだ綺麗な焼き色のついていないグラタンが鎮座していた。
「もう少しかな。先に唐揚げを揚げるか」
冨岡はそう呟いてから、味を染み込ませていた唐揚げに着手する。
本当ならば片栗粉と小麦粉、スパイスを調合してオリジナルの衣を作りたいところだったが、時間がないので今回は既製品の唐揚げ粉を使う。
「こだわった飲食店や専門店独自の唐揚げも美味しいけど、この唐揚げ粉が家庭の味なんだよな。ご飯に合わせて考え尽くされているし、冷めても美味しい」
唐揚げ粉のパッケージに書かれている通りの手順を踏み、油で揚げていく。
ジュワッと小気味のいい音を立てて、油の中で気泡が踊り始めた。飛び込んできた鶏肉を歓迎するかのように気泡が取り囲み、徐々に美味しそうな狐色をつけていく。
火が通ることによって、衣のスパイスや下味の醤油、にんにくの香りがふわっと広がった。
勉強していたフィーネもつい手を止めて、鼻をすんすんと鳴らす。
「うわー、いい匂い」
続いてアメリアも冨岡の方に視線を送った。
「本当ですね。ハンバーグとはまた違った匂いですが、こちらも食欲の湧く匂いです。香ばしい、と言うのでしょうか」
アメリアやフィーネにとってにんにくの香りが苦手なものだったらどうしよう、と今更ながら思っていた冨岡は胸を撫で下ろす。
「少なくとも香りは気に入ってもらえたみたいでよかったです」
そう言いながら冨岡は唐揚げを油から取り出した。
「もう完成ですか?」
冨岡の行動を見ていたアメリアが問いかけると、彼は首を横に振る。
「いえ、まだですよ」
そう、二度揚げだ。一度目は中まで火を通すために低温で揚げ、最後に表面をカリッとさせるために高温で揚げる。
そうすることでご家庭でも美味しい唐揚げを作ることができるのだ。
ドヤ顔でそう説明しようと思った冨岡だが、詳しい説明をすると異世界人であると暴かれかねないので自重する。
唐揚げを揚げ終えたところで、オーブンを確認するとグラタンに綺麗な焼き色がついていたので取り出し、今日の夕食は全て完成だ。
「よし、出来ました! 晩御飯にしましょう」
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