第163話 豪華な料理とは

 何とか話を合わせる冨岡に、そう優しく説明するアメリア。

 彼女の言葉に違和感を覚えた冨岡は「ん?」と首を傾げる。


「あれ、今『昨夜驚いた』って言いましたよね? もう驚いていないってことですか?」

「いえ、まだ驚いてはいますけど、それよりも・・・・・・その話は夕食の時にでもしませんか? 少し長くなるので、フィーネの勉強も進みませんしね」


 アメリアに言われ、冨岡も夕食の準備がそれほど進んでいないことに気づいた。話に夢中になってしまうと、いつまで経っても空腹のままである。


「そうですね」


 話の続きが気になる気持ちを抑えて、冨岡は料理に戻った。

 一旦、アメリアとフィーネを労う料理に集中する。フィーネのリクエストは『美味しいもの』だ。それに対して冨岡は『豪華な料理』にしようと答えた。

 冨岡にとって『豪華な料理』とは何だろうか、と考えた結果、誕生日などに自分が食べてきた料理に辿り着く。

 今夜のメニューはグラタン、唐揚げ、チャーハン。どれも冨岡の大好物だ。

 祖父、源次郎が誕生日に作ってくれた料理でもある。

 先ほど冨岡が切っていた玉ねぎはグラタンに入れる用だった。


「玉ねぎのくし切りはこれでいいかな。あとは鶏肉か」


 玉ねぎを切り終えた冨岡は続いて、鶏肉の下処理に入る。それと同時に鍋に水を張り、火にかけた。


「鶏肉はグラタンにも唐揚げにも使うから、切り方は二種類だな」


 グラタン用の鶏肉は食べやすいように細かく、唐揚げは一口大に切る。グラタン用の鶏肉は直ぐにフライパンで炒めて、色が白に変わってきたところで玉ねぎを投入。塩胡椒で味付けをして、しばらく炒める。

 具材を先に炒めておくことで、中が生焼けになることを防ぐのだ。

 それと同時に先ほど鍋に貼った水が沸騰する。そこにマカロニと塩ひとつまみを入れて軽くかき混ぜた。

 グラタン用の具材はほとんどこれで完成。時間の都合上、ホワイトソースは既製品のものを使う。


「フライパンの火を止めてから、次は唐揚げの味付けだ。ちょっとだけ漬け込みたいから、揚げるのはグラタンをオーブンで焼いてからかな」


 一口大に切った鶏肉をボウルに入れ、すりおろしにんにく小さじ一杯、すりおろし生姜小さじ一杯、塩胡椒少々、醤油と酒を大さじ一杯入れて保存用ラップをかけた。

 そのタイングでマカロニが茹で上がったので、一度グラタンの調理に戻る。


「まずはマカロニを敷いて、ホワイトソースを半分かける。その上に炒めた玉ねぎと鶏肉を並べて、残りのホワイトソースをかけたらチーズを多めに・・・・・・よし、あとはオーブンで焼けば完成だ」


 耐熱用の大きなグラタン皿に材料を集結させたところで、予熱していたオーブンに投入。あとは様子を見ながら焼いていくだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る