第131話 やっぱりリバーシ

「どういうこと? 私と勝負?」


 首を傾げるローズと隣で苦笑するダルク。


「トミオカ様、それはあまりにも・・・・・・ローズお嬢様はまだ八つでございますから」


 先ほど約束は対等な関係で、とは言ったものの『勝負』となれば大人と子どもの年齢差は大きく影響するだろう。

 ダルクの心配はもっともだが、そのように年齢差が顕著な荒っぽい勝負をするつもりはない。

 大人相手だから負けた、と思われては意味がなくなる。


「大丈夫ですよ。勝負と言っても机の上でするものですから」


 冨岡はそう言ってリュックから平たい箱を取り出した。ピザでも入っているのか、と思われるような箱の表面には『リバーシ』と書かれているが、ローズやダルクにカタカナが読めるはずもなくポカンとしている。


「それは一体?」


 ダルクに訊ねられた冨岡は慣れた手つきで箱を開けながら説明する。


「これは『リバーシ』ってゲームです。勝負というよりも遊びのイメージが強いかもしれませんね。簡単ですからすぐに覚えられるものですし、年齢による差はそれほど出ません」


 箱から出した盤と表裏で白黒に分かれている石を見せると二人とも目を輝かせた。

 当然、これほど精巧に物を作る技術など異世界には存在しない。初めて目にする技術というものは理屈ではなく、人の心を惹きつける。

 

「なにこれ、なにこれ」


 思わず立ち上がり、リバーシに食いつくローズ。ダルクもその場からは動かないが近くで見てみたい、とうずうずしているのが感じられる。

 全てを箱から取り出した冨岡は簡単にリバーシのルールを説明した。

 最初に二人向かい合って、白か黒を決め中央の四マスに白と黒の石を交互に置く。その後、黒から一つずつ石を置いていき、挟んだ石は自分の色にすることができる。最終的に盤上の石の色が多かった方の勝利だ。

 小さな子どもから大人まで気軽に遊べ、長年愛されているゲーム。

 その魅力は異世界でも色褪せることはなく、ローズは説明を聞いてすぐに手を挙げた。


「やってみたいわ!」

「じゃあ、最初は勝負ではなくルールの確認ということで、やってみましょうか」


 そう言って冨岡は中央に四つの石を置く。

 すると、これまで黙って話を聞いていたダルクが自分の顎に手を置きながら口を挟んだ。


「トミオカ様、これは白と黒どちらが有利なのでしょうか? 先と後が決められている以上、有利不利はあるのでは?」


 思っていたよりも真剣に思考していたダルク。

 この人めちゃくちゃリバーシやりたいんだろうな、と思いながら冨岡が答えた。


「結局のところ有利不利はあまりないみたいですよ。序盤は黒が有利で、終盤は白が有利って聞いたことがあります」

「なるほど、それでは上級者であれば白を選ぶべきですね。このダルク、見抜きましたぞ」


 すんごいドヤ顔だな、と苦笑しつつ冨岡はローズに選ばせる。

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