第102話 強さを買う、百億円で
改めて考えると『カップ麺』と言うジャンルの中に数えきれないほど種類があることは途轍もない食へのこだわりを感じる。食品会社の開発努力に感謝だ。
食事を終えた冨岡はそのまま明日の準備に入る。本心で言えば『フィーネに発現した能力』についての話がしたかったが、食材の用意をするためには元の世界に戻って買い出しに行く必要があり、先に終わらせておかなければ明日の営業ができない。
「俺は明日用の食材を用意してくるので、アメリアさんはフィーネちゃんの勉強を見ててもらってもいいですか? えっと、簡単な計算はできるようになってきたから、文字の読み書きがいいでしょうか」
そう言い残すと冨岡は慌てて元の世界に戻る。いつも通り鏡を通って祖父の家に帰ると雲ひとつない満天の星空が冨岡を迎えた。
無事に元の世界に戻ってくると今日の出来事を鮮明に思い出してします。
「俺・・・・・・刺されたんだよな。記憶は曖昧だけど痛みは覚えてる。死んでもおかしくなかった・・・・・・」
呟きながら冨岡は自分の背中に手を回した。体が硬くて刺された位置まで届かないが、刃が体に入り込んでくる感触だけは残っている。
もしもフィーネに謎の力『聖女の奇跡』がなければ、と考えると身震いするほどだ。
「異世界転移はできるものの特殊な力はないどころか魔法も使えない。俺の弱さで俺が傷つくのは仕方ないにしても・・・・・・俺のせいであの二人が傷つくことのになったら・・・・・・くそ、強くなりたいな」
そう願っても強さなど簡単に手に入るものではない。今から格闘技を習っても、命懸けで戦っている傭兵に勝てるわけないだろう。
冨岡は『強さ』というある種答えの出ないものに向き合いながら車に乗り込んだ。いつも通り無意識にラジオをつけ、暗い夜道を走り出す。
走行音と共にラジオからは今日あったニュースが聞こえてきた。
「市民の安全が脅かされる事件ですね、これは」
「ええ、そんな物が街中にあると思うと安心して暮らすことができません」
「取り締まりの強化を願うばかりですね。それでは続いてのニュースです」
ラジオの中では二人のアナウンサーが『不法所持』について話していたらしい。幸いにも大きな事件に発展していなかったため短い話だったが、冨岡がひらめくには充分な情報だった。
簡単に『強くなる』ことはできない。しかし、『強さを買うこと』はできる。ただし、それはこの国では違法行為だ。
「多少の危険は伴う・・・・・・けど、向こうの世界では『それ』を取り締まる法なんてない。よし、覚悟を決めるか! 俺にあるのはお金だけだ。お金を使って一気に作り上げるんだ。理想の状態を」
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