第22話 主食コメ
冨岡はおにぎりを半分に割り、片方をアメリアに手渡した。彼女はおにぎりの断面を観察してから口を開く。
「黒い部分は薄くて、中は白・・・・・・とさらに中は赤っぽい魚のような・・・・・・」
「黒い部分が海苔、白いのは米、赤っぽいのは鮭という魚ですよ」
説明してから冨岡はおにぎりを一口食べて見せた。
「うん、美味い。やっぱり安定の味だな」
冨岡が食べたことを確認したアメリアは恐る恐るおにぎりを口に運ぶ。冨岡と同じように食べるとパリッとした海苔の音が響いた。
「はむっ・・・・・・ん!」
味に驚いたのかアメリアは目を見開いて感情を表現する。その様子を見ていたフィーネは心配するように問いかけた。
「どうしたの先生。大丈夫?」
先生とはアメリアのことだろう。フィーネの心配を察したアメリアは口内のおにぎりを飲み込んでから答えた。
「ええ、大丈夫よ。それどころか、驚くほど美味しいわ・・・・・・香ばしさと磯の香りを持ったパリパリのノリとほのかに甘いコメ。そして塩味のついた美味しいサケ・・・・・・口の中で合わさって新しい美味しさを作り出してくれる」
「ほんと? じゃあ、フィーネも食べたい!」
アメリアの感想を聞いたフィーネはそう言ってもう一つのおにぎりを手に取る。しかしビニール包装の剥がし方が分からず、どうすればいいのだろうかと首を傾げた。
それに気づいた冨岡はフィーネに手を差し出す。
「貸してごらん? おにぎりの包装はここを引っ張って左右に広げるんだよ。こうすると、ほら」
先ほどと同じようにおにぎりを向いた冨岡はそのままフィーネに手渡した。受け取ったフィーネは恐れずにおにぎりに齧り付く。
「はむっ。んん! ふむぁ、ほいひぃ」
一口食べてすぐに感動を伝えようとするフィーネ。口の中は米でいっぱいのようだ。
「こらこら、フィーネ。口の中にある状態で話してはいけませんよ」
「ごむんなはい」
アメリアに注意されたフィーネは謝ってからもぐもぐと咀嚼する。
そんなフィーネを眺めて微笑む冨岡にアメリアが話しかけた。
「私、こんなに美味しいものは食べたことがありません」
「ははっ、喜んでもらえたならよかったです」
「本当に美味しかったです。これはトミオカさんの故郷にある食べ物ですか?」
質問された冨岡は優しく頷いた。
「ええ、おにぎりというか米が主食ですね。米単体はそれほど味のあるものではないのですが、肉や魚との相性が抜群なんです」
「コメが主食・・・・・・パンではないんですね。どうやらフィーネも美味しかったみたいですよ」
アメリアの言う通りフィーネは二口目を食べ進めている。相当お気に召したらしく、一心不乱に頬張っていた。
「フィーネちゃんが喜んでくれているなら良かった。慌てて喉に詰めないよう気をつけるんだよ」
そう言って冨岡はミネラルウォーターのペットボトルを開ける。
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