第31話新しい娯楽
この世界でも古代の娯楽はとかく血生臭い。
公開処刑・剣闘士による試合、風俗、演劇、見世物などがこの世界でも一般的で、富裕層では園芸、食、芸術、読書、狩りなどと多種多様である。
しかし人間の欲と言うモノに際限はなく人々は日々新しい娯楽を探していた。
「シュルケン様の御蔭で数多くのテーブルゲームが産まれました。また遊ぶだけではなく作る楽しみも提示していただけましたので庶民から富裕層、果ては王族まで楽しまれております。
何か新しい娯楽はありませんでしょうか?」
久しぶりに御用商人が顔を見せたかと思えば新しい娯楽を売れと言う。
俺はお前の商会の店員でもなければ平民でもない。
その願いを聞いてやる必要はないのだが……父上がそれを許してくれない。
「訊いての通りアイザックも、貴族から他の遊びはないか? と聞かれて困っていると言うシュルケン何とかできないか?」
アイザックはシュルケンが所有する商会から販売されている洋服……スーツに身を包んでおり服装から貴方にはかないません。と下てに出ている事が伺えるものの、貴族である父上が商人相手に下手に出る必要が判らない。
「父上、お言葉を返すようですが19種類以上の娯楽を “金銭と引き換えに” 提供したハズですが……その全てを3年程度で放出したのはそこで頭を垂れている御用商人……ザク? でしたか? の責任では? 幾ら御用商人とは言え自身の失敗を貴族に拭えとはどういう事でしょう?」
少し横柄に宣言すると肘掛に手を乗せ腰を浮かせる――
すると……
「待て! アイザックの商会はシュルケンが提案した道路整備に莫大な金を提供してくれているんだぞ?」
父上にしては良い手だ。
しかし、ここまでワザとらしい俺の動きに乗ってくるあたり、相当追い詰められているのだろう。
「手を貸して貰ってるんだから助けてやってくれ」か……それを「手を貸して貰っている側」が「手を貸してくれている側」に言うのだからお笑いだ。
「お言葉を返すようですが本来、御用商人とは庇護している貴族が潰れないように金を入れ、領地を開発し富ませる言わばこの領地の領民代表! 金を提供するのは当たり前の事では?」
「ぐ!」
「それに本来、対モンスター戦争のような地方のいいえ、国の……人類の危機と言って状態であれば他量や国から金銭・物資・人員を問わない包括的な援助が必要でしょう……」
「シュルケン!」
「言葉が過ぎました。政治批判をしたいのではなくあくまでも理想論を語ったまでの事……」
「お言葉を返すようですが、私の商会も金は出しています。
必要な金を出させたからと言って、便宜を図って居れば際限がありません……賄賂を受け取る事は避難しませんが商人をあまり舐めない方が宜しいかと……父上が上手く使っていると思っていても実は商人の掌の上と言う事も考えられます」
「それでどうして御用商人は新しい娯楽が欲しいので?」
「授けて下さるので?」
「理由次第です。以前までとは異なり俺には自前の商会がある貴方に頼る理由は薄くなった……」
「都の社交場と言うモノは常に物珍しいモノを求めているのです。
(殆ど全部古代ローマで食べられていた動物ばかりだ)
「それで新しい催物が欲しいと?」
「その通りでございます」
「それではこんなものはどうだろう?」
そう言ってメイドに持って来させたのはボールだった。
「ボールですか?」
「大きさや形が多少違うようだが、ボールを一体どうするつもりだ?」
その疑問は最もなものだ。
この世界ではボールと言えばバスケットボールのドリブルのようにボールを付いたり、投げたりすると言う簡素なものばかりだと元傭兵・元冒険者の兵士達から聞いた。
ボールの内一際小さなボールとラケットを一つを手に取る。
「これはテニスボールと言いましてラケット……異国の言葉で『ラーハ』掌を意味する道具を用いる紳士の遊戯です」
「紳士の遊戯とは興味が沸きますな!」
食いつきは上場、後はどれだけ高く売りつけるかだな……
「なぜボールが小さいんだ? ラケット? で打つには小さすぎるんじゃないか? それに毛羽だっている」
「難しいから面白いのです。毛羽だっているのは、球速を落すためです。仰られた通り速く、小さい球を打つのは困難ですので……」
カップに一口、口を付け口を湿らせると再び説明をする。
「ラケットに貼られている紐……ストリングスは、動物の腸を職人が手作業で加工していますので、大量生産に向かず高位貴族向けに販売するのがいいでしょう」
「動物の腸を? 腸詰め以外に用いるとは面白いですな……」
「羊やヤギ、牛や豚、ラバ、ロバと言った家畜全般から作れますが、加工が難しく職人たちは
何も
「貴重なのは判りました。皆欲しがるでしょうな……」
「外交に使われるといいでしょう。現物、優先販売など敢えて明確な“差”を設ける事で違いを理解するでしょう……」
「他のボールにも専用の遊戯……があるのでしょう?」
「もちろんです」
俺はニタリと意味心な笑みを浮かべた。
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