第39話襲撃の準備

 シャドウウルフに「盗賊達を襲って何人かわざと逃がすように」と、命令した御蔭で俺達は盗賊共のアジトを発見する事が出来ていた。


 何人かの騎士を偵察に向かわせたところ、鉱山の跡地……廃坑らしき場所を根城にしているようだった。

 鉱山の周囲には、煉瓦や石を積み上げられた痕跡があり、古の大帝国時代にはここに人が住んでいたのだと実感させられる。

 飯の煮炊きや坑道の補強に使ったのか、木々は雑多に切り倒されており航空写真があれば、一目両全と言っていい程の広さになっている。

 


 鉱山跡地を望める場所に身を潜め俺達は、偵察してきた騎士を交えいつ拠点に乗り込むか作戦会議をしていた。

 考古学や古生物、歴史や神話、宗教と言った。古代の浪漫が大好物の俺にとっては、今生で初めて見る古代の痕跡だった。


「ここが盗賊の根城アジトか……なんだか一番雰囲気がああるな……」


 近衛の騎士達は俺の側に立って、周囲を警戒している。

 盗賊が何人いるかは判らないが、極端な話出入口を何かしら塞いでしまえば窒息か餓死するので騎士達の気は抜けている。

 何度かメンバーが入れ替わっているものの度重なる遠征と、今回の突発的な戦闘で集中力が切れているのだろう。

 これはあまり良い傾向ではない。

 重大なミスを起こす前に何とか決着を付けなくては……


「シュルケン様、度重なる任務と此度の戦闘で騎士達の士気は大いに下がっております」


 『お調子者の騎士ナイト・クラウン』と仇名されるヘイヴィアは会議に参加している者だけに聞こえるように発言する。


「判ってる。ぶら下げる人参は何が良いだろうか? 変に浮足だたれても問題だ」


 俺の言葉に老騎士は同意する。


「確かにそうですな……しかし、ここは大きな報酬が良いでしょう。騎士達も疲れを忘れて戦う事ができましょうぞ」


「では報酬は貴殿に任せる。金は俺の商会から出そう」


「よろしいのですか?」


 俺の言葉に目を丸くして老騎士は聞き返す。


「無論だ。今回の規模の盗賊ともなれば虜囚となっている民も要るだろう。今回の村でも娘が攫われたと喚いている夫婦が居たと訊く、兵の精神衛生上も生き埋めにして文字通り全滅というのは心が痛むからな。やる気を出してくれた方が俺としても助かる」


 最近の父上は俺の商会の事を公爵の財布と思っている節がある。

 確かに将来的には公爵家の財布になるのだが、今はまだ俺だけの財布だ。

 ここで騎士達の忠誠を金で買って父上を金払いの悪い奴と思わせ忠誠心を俺に向けさせるのも一興だ。


「兵達にはそのように伝えておきます」


 そう言って老騎士は一足先に会議を抜け交代で休息を取りながら、ハードビスケットを食べている騎士達へ報告に向っていく後ろ姿を見つめる。

 会議中の騎士達は俺が他所事を考えているとは、少しばかりも考えていないだろう。

 騎士達は水筒に淹れた水でふやかしながらハードビスケットを食べている。

 欠伸をしている者も要れば、老騎士から報酬の話を訊いて楽しそうな笑顔を浮かべている奴も多い。


 正直言って今一戦交えるのは被害が大くなりそうなので、御免被りたいが虜囚の救出を考えると他に選択肢は少ない。


「シュルケン様、ご無理はなさらないでください。無理だと判断した場合は即座に後方へ下がって下さい」


 ヘイヴィアの進言に対して俺は首を横に振る。


「兵達が民を救うため死地に向かおうとする中で、後方に下がるなどできるハズないだろう」


 実際問題、馬の上でうつらうつらしたけれどまだまだ眠気は取れていない。


「判りましたシュルケン様の御意思を尊重いたします。しかし、供回りの騎士をお連れ下さい御身は既に『ただの公爵家の子共』ではなく、若き英雄なのです。もし盗賊との戦で重症を負ったり崩御されては、民草や騎士の心に深い傷後を残す事になるでしょう」


 初陣の時に奇襲を仕掛けたと思ったら奇襲を仕掛けられていました。と言うギャグの事を言っているのだろう。

 初陣でアレは仕方がないと思うのだが、ヘイヴィアにとってはトラウマ級の出来事のようだ。

 確かに俺が人質に取られては目も当てられないからな。

 ヘイヴィアの忠告には従っておこう。


「忠告には従う事にしよう人選は任せる」


 急いで攻め込んだ来たため、敵の総数は一切判っていない。

 攻撃を仕掛けたと思ったら、こちらも攻撃をされましたでは示しがつかないからな。

 まぁ盗賊だって馬鹿じゃない。

 中には元騎士、元貴族の高い戦闘能力を持った厄介な奴も居ると訊く。

 これだけの大規模な盗賊団を今まで隠していた頭目の手腕は流石としか言いようがない。

 既に何かしらの策を打っていると考えてまず間違いはないだろう。


「シュルケン様、騎士達の休息と攻撃の準備が整いました」


 会議から半刻程後、ヘイヴィアは準備が完了した旨を報告する。

 俺は欠伸を噛み殺しながら出来るだけ横柄に頷いて見せる。


「では作戦通りに行動しよう。諸君の検討を期待する」


 俺の言葉に騎士達は力強く首を縦に振る。

 さて今回の盗賊はどれだけの宝を溜め込んでいる事やら、前世で読んだ小説で主人公が「盗賊は資源だの貯金箱」と言っていた事を思い出した。

 今回はタップリ溜め込んでいるといいな。

 



============

『あとがき』


 最新話まで読んでいただきありがとうございます。

 読者の皆様に、大切なお願いがあります。

 少しでも


「面白そう!」

「続きがきになる!」

「主人公・作者がんばってるな」


 そう思っていただけましたら、

 作品のフォローと、最新話ページ下部の『☆で称える』の+ボタンを3回押して「★★★」にして、評価を入れていただけると嬉しいです。

つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★

読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!


 ブックマーク、ユーザーフォローもポチッと押せば超簡単にできます。

 多くの方に注目していただくためにも、ぜひ応援していただけると嬉しいです!


 誤字脱字報告、気になる点、感想は『応援コメント』へお願いします。

毎日18時頃更新しておりますのでよろしくお願いいたします。


新作のタイトル

【好きな幼馴染がバスケ部OBのチャラ男に寝取られたので、逃げ出したくて見返したくて猛勉強して難関私立に合格しました。「父さん再婚したいんだ」「別にいいけど……」継母の娘は超絶美少女でした】

https://kakuyomu.jp/works/16817330658155508045/episodes/16817330659866009057

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る