見ている

 あの塔には神様が住んでいる。

 村の言い伝えでは、そういうことになっている。


 目玉が乗っかった形をした奇妙な塔だ。確かに何処にいてもそこから絶えず、突き刺さるような視線を感じてしまう。

 神様は全てを見ている。人々を見守り、そして悪事を許さない。そこに慈悲はない。

 だから今日も、悪い人間は裁かれる。


 ――違うんです、わたしは決してあなたを疑うことなんて、


 途切れる言葉。

 短い悲鳴。

 何かが壊れる音。誰かの長い悲鳴。何かがへし折れる音。液体が飛び散った音。一際大きな悲鳴。誰かの祈る声。祈る声。祈る声。


 それからは、もう何も聞こえて来やしなかった。 

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