影
丸い影がついてくる。進んでも、進んでも、その形がついてくる。
あれは一体なんだろう。
お日様。お月様。お気に入りの皿に、マグカップ。誰か大きな生き物の、コンタクトレンズというのも面白いかもしれない。
綺麗な円をしている。角の無い曲線は途切れることなく延々と回り続けている。終わりも始まりもどこにもない線が影の輪郭を作って密やかについてくる。
遠く、ビルの上に。
満月とならんで双子のように。
おかしな幻覚だ。何かの暗示だろうか。何の心当たりもありはしないが、無さ過ぎるのも腑に落ちない。あれやこれやと、丸いものへと思考を滑らせていく。財布の中で音を立てている硬貨。テレビで見た白球。棚に仕舞いっ放しのVDV。今朝食べた目玉焼き。ああ、そうだ。明日の朝はパンケーキを食べよう。
最後にぐう、と腹の虫が鳴って逸れた思考。あれが何であるかは不明のままだが、丸いものを食べながらの方が思い出せるかもしれない。
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