誤作動

 壊れた船の足元に植えた植物達も順調に育ってきた。食べられるものを植えたわけではないが、緑が見えるとどこか嬉しくなってくる。


 あの船が来たときは、世界が終わってしまうのかと思ったのが懐かしい。なにせ、今までに聞いたことが無いような轟音がして、大地が大きく揺れたのだから。それらが収まった後も、耳をふさいで体を小さく丸めた姿勢のまま、心臓が落ち着くのを待った。


 様子を見に行けたのは半日ほどたった日暮れ前。陽が落ちてしまっては何も見えないし、何より一晩も不安を抱えて過ごすのは嫌だった。深呼販をし、覚悟を決めて、音が聞こえた方を覗いた先にあったのがあの船だ。半分崩れ煙が立ちのぼる、銀色の塊。誰も乗っていないそれが、枯れた大地に突き刺さっていた。


 中には水と食料と、種があった。それから、かつての敵国の名が記された紙切れが一つ。

 味方に向けた支援物資を運ぶ船が、何かの間違いで今こちらへと来たらしい。なんとも因果な話だが、今こうして私が生きていられるのも物資のおかげだ。


 ――忌まわしきに、感謝を


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