第3話 ここはどこ?

目を開けると、新世界が広がっている。

とても澄んだ空、エメラルドブルーの海、小鳥達ののさえずり。


でも、それだけしかない…それだけ…

ここはどこなのか?


【えっ、これ私のいた世界?】


誰もいない、こんなに奇麗な世界は見たことない。


【誰かー!返事して!】


何も帰ってこない。不安がよぎる。


【ユキ、そこ動くな!】


聞き覚えのある声だ。そして…優しく懐かしい…

何故かほっとして涙が。


【待たせたな、ユキ】


【涼さん!涼さんなの?どうしてここへ】


ユキは同時に涼に飛び込んだ!強く強く抱きしめて。

涼も強くユキを抱きしめた。


【涼さん、何があったか後で教えて、今はもう少しだけこのままで…】


【解った。ユキ】


このときが無限に続けばいい…二人はそう思って

いた。それが現実になろうとは、本当のターニングポイントを迎えることに。


【涼さん、少し落ち着いた。ここはどこなの?】


【俺も記憶が…ユキといた世界からここに来る前に何かがあったような…でも思い出せない】


【涼さん、パラレルワールドは?】


【パラレルワールド?】


涼、記憶にないんだ。だとすると、小学生から一度大人になって、過去に戻って…例なって人は?


【涼さん、正直に話すね。涼さんはパラレルワールドに飛ばされ、そこで大人になるまで経験してるの。パラレルワールドで結婚もしてるの】


【ユキ、ちょっと待て。パラレルワールド?俺が?そこで結婚って、ユキと?】


【涼さん、パラレルワールドでのこと何も思い出せない?】


【俺はユキと結婚していたよな?それから何か空白の時間はあった。でも気がつけばここに来てる】


【涼さん、玲奈って人は?】


【玲奈って?誰?】


ユキは暫く考えた。涼はパラレルワールドの記憶がない。私はパラレルワールドの記憶がある。


涼はパラレルワールド間で未来から過去に戻ってる。パラレルワールド間での記憶はあるのだろうか?


何故ここに二人だけ?それにこの世界は何もない?


【涼さん、私がTAだったこと覚えてる?】


【時間軸調整課だろ?知ってるよ。何で?】


涼は元の世界は覚えている。パラレルワールドの

記憶がないんだ。


何で私は覚えているの?何があったの?この世界。

何か、何かおかしい?


【涼さん、この世界、何かおかしい!】


【それは解る。これってさ、TA理論では?】


【レベル4の分岐】


涼さんはTAのことは知らない。私が家で教えてるくらい。だから基礎的なことは知ってる。


【分岐…ついに起きてしまったのか】


【おそらく精神が、私の精神が強く働きかけ、

それであの時、タイムパラドックスが起きて

レベル4の分岐が起きたの】


【タイムパラドックス…】


【涼さん、どう判断する?ここにずっといても何もないから、でも私は涼さんといれるから、不安は

ない。ただ、みんなのこと…】


【ユキ、分岐ならどうすれば戻れる?時空の狭間に飛び込むしか方法ないよな?】


【涼さんは戻りたい?もし戻ったら二人が会える

保証ないよ。それに記憶なくなるかも】


涼はかんがえこんでいる。ユキは涼を見つめて、

もし戻れるならみんなに会える。でも涼は記憶が残ってる保証はない。


この世界で生涯、涼と暮らしていける。

でも、涼はそれで幸せかな?


涼の手を握り、引っ張って抱きついた。


【あのね、涼さん。ここにずっといて…】


【ユキ、俺からは言わせて。ここにいよう】


【涼さん…】


【俺はユキのこと忘れるのは死と同じだ】


【涼さん、そんなこと言わないで。もしここで

時空の狭間が出たら迷わないの?】


【迷わない、ユキとずっといる】


ユキは涼の生活、関わってる人々のこと、考えて、

涼の優しさを知ってるからこそ決断した。


【涼さん、ごめんね】


幸せは二人だけで作れるものではない。一度は涼の未来を守ることを決断したから。


私の勝手な想像の世界で涼を縛り付けては駄目だ。


戻れる可能性があるなら、そこに涼の幸せがある

なら、ここにずっといては駄目だ。


その時、涼の後ろに時空の狭間が現れた。


【涼さん、手を話さないで、私は忘れないから】


ユキは涼と時空の狭間に飛び込んだ。





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