第2話 時の逆流

二人が行き着いた先は、並行する世界。

パラレルワールドと呼ばれる世界だ。

平穏な空気で何事もない世界のようだ。


【ユキ、どこ?】


【ここ!】


幸いなことに、飛び込んだタイミングがほぼ同じ、

だからなのか、比較的側に着いたようだ。

ただ時間が解らない。二人はお互いを見て、


【えっ、るい?】


【ユキ、元の世界から来た?】


子供の姿だ、二人共。小学生くらいだろうか?


【覚えてるよね、私達大人だったよね?】


ユキはキョトンとして、るいに話しかけた。


【うん、何故か姿だけは完全に子供】


【なんで?パラレルワールドに来たら子供になるの?教官言ってた?】


【何も、重要なこと言わないんだよなー、あいつ!】


るいは怒ってる。


【戻ってたら大人になってると思うよ、とりあえずユキは彼氏探して、私は別行動する。全体把握してくる。危なくなったら先に戻って。あと、涼さんって人、見つけたらすぐ能力で連絡する】


【解った、るいも、無茶しちゃ駄目だよ】


るいは、もうどこか行ってしまった。


【相変わらず人の話聞かないなー、るい。高能力者だから自信あるのかも知れないけど】


ユキは辺りを見て、すぐに把握した。


【何もかも一緒だ、ほんとに並行世界】


とりあえず、彼氏もこの世界では、子供に戻ってるはず。その年代にいたと思われる場所に移動した。記憶の調整が必要だから、少し能力者を使う。


【涼さん、小学生なら涼ちゃん、涼くん…どう呼べばいいかな?子供の頃って雰囲気違うのかな?無邪気な涼さんも可愛いと思うけど、同年代の姿だから、馴れ馴れしくも出来ない。接し方難しい…】


そんなこと考えて通っていると思われる小学校に

ついた。先生らしい人がそばに来て、


【どうしたの?遅刻?早く入って】


【あっ、すみません。転校生です】


ユキは能力者、ある範囲で記憶の操作は出来る。

完璧でないが、そこは曖昧にごまかすつもりだ。


教室での紹介を卒なくこなした。


多少の質問攻めには、何とか凌いた感じで。


ユキは本来の年齢はもう大人。それ故落ち着いた

子供に見えたのだろう、外見も手伝ってあっと言う間に友達も出来た。


【涼さん、どこかな?】


このクラスではないようだ。年齢的には同年代だと

思ってはいるが見つからない。


この世界に来たとき、毎回子供からなのか?

あの時の時空の狭間が影響してるのか?

解らないことばかりだ。るいは何か解ったかな?


その帰り道、雰囲気からついに涼らしいと思われる男の子を見つけた。


【間違いない。涼さんだ!】


涼の後につけていくと、涼の実家についた。

この頃は新築。でも場所も間違いない。


ユキはベルを押した。涼の母親が出てきた。


【涼、お友達来てるよー】


ユキは緊張した。会ったらすぐに飛びつきそう…

でも涼が覚えているか、解らない。


ユキは泣きそうになりながらも、涼の様子を

見て、前の世界の記憶が無いごとを確信した。

涼は記憶がない。


そりゃそうだよね、るいとか私が特別なんだよね。

でも、子供の涼さん可愛い!この世界に残ろうかな?

正直に話そうかな?


ユキは全て話すことを決断した。

冷静に通常の業務のように話しだした。


【解らなくて当然です。過去に出会っていません。  時間軸調整課のユキです】


【あなたは12才となっています。かなりの年月を戻ってるため私が調整にきました。調整無しで戻ることは困難です】


涼は私のこと始めて会った女のコだと思ってる。

どういう反応するのかな?興味あるけど…


【意味解らない、とりあえず夢だから何でもいいけど、凄く素敵な女のコで緊張しちゃって】


涼の言葉に喜ぶ反面、ちょっとムカつく自分が

いる。前の世界では涼さんと婚約していたのに…

私だとは思ってない様子…女のコに免疫なさそう。


ユキは淡々と説明する。


パニックにならないように、別の場所で説明した。

でも涼さん、予想通りパニックになってる…

私は少なくとも涼に会えたことが嬉しい。

そう思うようにした。思い出さなくてもいい、

また涼と一緒になりたいと、この世界で…


そうなると自分のこともある程度作り上げないとならないので、ユキはとにかく辻褄が会うように、

調整した。今の涼にこれ以上説明しても混乱する。


【涼さん、この世界で見守っていくからね】


ユキはここで、涼と離れた。涼は考えながら家に

帰った。突如、るいから連絡入る。能力者同士の

会話だ。直接頭の中に語りかける。


【ユキ、落ち着いて聞いて、涼さんって人一回目じゃない!少なくともこの世界で大人になって、玲奈って人と結婚してる】


るいは、続ける。


【それで、玲奈って人といた未来で何かの異変で過去に戻ってる。本人に記憶があるはどうか解らない。ユキに会ったときより記憶していた?】


ユキは頭の中に真っ白に…


【ここで、未来を変えてもし、それが大きなターニングポイントなら、タイムパラドックス起こるかも、どうする?】


ユキは言葉が出ない。


【恐らく玲奈って人と結婚してタイムパラドックス起きてないなら、ユキには酷だけど、それが安全なルートかも知れない…ただ、結婚するまでだいぶ先だから、玲奈って人と知り合う前なら接触しても大丈夫。彼氏、思い出したらヤバいけど】


【ありがとう、るい。辛いけど、涼さんの幸せ願うなら私は身を引く。せめて玲奈って人と出会うまで見守る。それに…元の世界にも戻らないと。こうなるとずっとここにいて玲奈って人と出会うまでってのも辛すぎる】


【ごめんね、ユキ。真実伝えないと後悔しそうで、私が特に能力高いからさほど負担なく未来まで行けてしまったから、見なくていい未来も見てしまって。ほんとごめん】


【教えてくれてありがとう。少なくとも涼さんのこと、見守ること出来る。それでも辛くなったらるいに会って泣く、大泣きする】


【ユキの覚悟伝わってきた。よし、私も残る。私も涼って人見守る。元の世界にも行来してもユキほど負担ないからね、なんせ高能力者だから!】


【るい、ありがとう。るいは好きな人いたの?元の世界で】


【いない、いない、理想高すぎなんでしょ、私】


【そうだね、じゃ、お願い。玲奈って人と涼さん

出会えたら未練ないし、元の世界でるいと暮らす】


るいとの会話が終わった後、凄く気丈に振る舞っていたユキは言葉とは裏腹に、涙が出てきた。望んでいた未来が変わってしまった。でも涼さんにとって幸せなら…


涼さん、幸せになれるなら私の選択は後悔しない。

涙が、感情が、優先されて。今は泣くことにした。


涙が地面に落ちる前に暗闇閉ざされた。


【えっ、何が起きたの?】


ユキが戸惑いながら感覚を研ぎ澄ませ、状況を

整理しようとしていた。


この経験はない。とてつもない何かが起きている。


冷静にならないと、自分に言い聞かせながらも、

不安がよぎって目を開けることが出来なかった。

















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