第4話 真実

「どう?思い出した?」

妻の声には迫力があった。

俺はまだ何も思い出せない。

「じゃあ、思い出したら2階へ来て」

そういうと2階へと上がってしまった。


依然として俺は何も思い出せないでいた。

しかし、断片的であるが妻の声に聞き覚えがある。

目を瞑って声と連動させる事で必死に思い出そうとする。

……か……かす……み…かすみ

そう彼女の名前は香澄。

名前を思い出した事で堰を切ったように記憶が甦ってくる。

そうだ、彼女と俺は不倫関係にあって、俺の事をすごく好きでいてくれた香澄は俺を喜ばせる為に俺好みの女になる事を約束し、ラバープレイが始まった。


始めはもちろん、ホテルだけだった。

しかし、だんだんとエスカレートしていき、ドライブデートの時やひと気のない海や山の屋外プレイに発展していった。


そしてあの映像。

香澄の夫が長期出張のタイミングで、香澄から不倫旅行に行きたいと言われて行く事にした、条件付きで。

それが寝る時以外はずっとラバースーツを着る事。

さすがに、そんな事は出来ないと拒否され、不倫旅行も断る計画だったが、香澄はその条件を飲んだ。

それが先程の映像だ。


その後、この家でも不倫行為に及んだのだが、ある時香澄の夫が早く帰宅し、不倫がバレてしまった。

俺は慌てて逃げる際、隣の塀を乗り越えて落ちたところにあった大きな石に頭をぶつけて部分的に記憶が飛んでしまった。


その後の香澄については俺は全く知らないし、今の今まで記憶が飛んでいた。

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