第1話 ガラスのような転校生

篠崎しのざきさん…好きです。付き合ってください」


「ごめんなさい」


 高一の夏。高校生になって告白されるのは、これが4度目だった。

「好き」という言葉にはいくつも種類があって、正直困ってしまう。友達に言う「好き」、恋人に言う「好き」、家族に言う「好き」。使う言葉は同じなのに意味が違う。日本語のややこしいところだと思う。

 告白される度に「この人は私のことをどれくらい好きなんだろう」と、そう考えていた。そもそも私は彼らのことを知らないし、彼らも私のことを大して知らないのだろう。きっと彼らは、私の外見的な要素や勝手なイメージで告白しているのだと思う。それが悪いことだと思わないけど、私はそれがあまり好きじゃない。


(恋愛は当分しなくて良いかな…)


 そう思っていた時に現れたのは、一人の転校生だった。


「新潟から来ました、平田壮介ひらたそうすけです。よろしくお願いします」


 朝のホームルーム。先生が連れて来たのは、茶髪でチャラそうな見た目の男子だ。

 他人に興味がなさそうな自己紹介を聞いて、彼は私と同類なのかもしれないと感じていた。初対面でもそう感じてしまうほど、彼の放つ雰囲気は異様だった。


「えーっと…空いてる席は……。あ、ちょうど良いか。平田、篠崎の隣に座れ。篠崎、学級委員だし学校のこと教えてやれよー」


 私の隣が空席だったので、担任の先生がそう言った。私はそれに「はい。わかりました」と、簡潔に答える。何となくこうなる気はしていたので、特に言うことはなかった。


「よろしく、平田くん」


「よろしく」


 私たちの初めての会話はそれで終わった。名前を聞いてこないあたり、本当に他人に興味がないみたいだ。


「今日の放課後は空いてる?」


「空いてる」


「ならその時に色々教えるから」


「わかった。ありがとう」


 必要最低限の会話。面白味は何もないけど安心感はある。平田くんなら、どれだけ関わってもお互いが好きになることはないだろう。

 もし仮に彼が告白してきても、断って距離を取るだけだ。

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