第九話苦しい時ほど音楽は大事!
野草にドレッシング、肉に焼肉のタレを提供し昨日の夜とは全然違う和気藹々とした夜ご飯を終え興奮したあまりアギトがご近所を走り回っておすそ分けをしているのを話題にシロナや子供達と盛り上がっていた最中突然シロナが顔を青くして震えだした。
子供達と一緒に心配しているものの誰も声をかけられずいると行かなくちゃとだけ震えながら繰り返している。しかしそれで俺は察した。
おそらく誘引スキルが暴走気味に発動しているとかそう言うテンプレだろう。
「よし、じゃあ行くとするか!」
シロナが何を言っているのかわからないと言う風にこちらを見ている。
もしくは俺の言葉を疑っているのか。本気かと。正気かと。
「言っただろ?俺がお前の辛さを一緒に背負ってやるって。お前は逃げないんだろうし割り切れないんだろう?お前は死ぬしかないと思ってるだろうけど俺は生きるぜ?上等だよこんな人生は。我に七難八苦を与え給えってな。人生ってのは生きるってのは修行だって親父はよく言ってたんだ。乗り越えられない試練を神様は用意しないってな。俺たちはこんなことで死ぬような生き方はしてこなかった。そう思って進もうぜ!俺はもう腹はくくった!」
人格を乗っ取られる覚悟も狂って戻れなくなる覚悟もできている。
どうせ絶望的な強さの敵かスタンピード、もしくはその両方だろう。
「でも!きっと死んじゃうよ!もしかしたらどこ絵言っても無駄かもしれない!そんな数の鬼と鬼の上位種が僕の元に向かいだしてる。でもこんなの誰にも言えないよ!どうしよう!どうしよう!」
「だから行こう!大丈夫!誰も死なない。運命ってのは奇跡ってのは必然的に転がってるもんだ。為せば成るさ!さあ行こう!」
「でも!でも!」
「いいか。よく聞いてくれ。運命だなんだが信じられなくてもいい。だけどこのままならどっちみち最悪だ。この街の人たちを巻き込んで生き残れたとしてもお前はもう立ち上がれないと俺は思う。滅んでも最後まで後悔して死ぬだろう。でもこれはチャンスなんだ!乗り越えればもうお前はそんスキルの重荷に向き合えるようになるはずだ。それにたとえ死んじまってもそれこそ必死に守るために戦って死ぬのなら後悔も自責の念もなく満足して逝ける。」
「どうしてそこまで・・・?」
「言っただろ。人間は誰かのために何かをすることはできない。俺は俺がお前のために命をかけることができるのが嬉しいから俺のために命をかけるんだ。女の子にカッコつけたい以上に男が命をかけたい理由なんてあるかよ。まあ家族のためってやつもいるだろうがあいにく俺は天涯孤独の天上天下唯我独尊だからな。」
「ふふっ何それっ。でもありがとう。」
シロナがようやく笑ってくれた。
あとは俺にしがみついている子供達に言い聞かせなきゃいけない。
骨が折れる。
「シロナ!シツカちゃん!クウカイ!リキュウ1約束だ!俺たちが守る!絶対に生きて帰る!三人とも!俺も男だ!言ったことは守る!信じてくれ!」
子供達も涙を拭って約束!と納得してくれた。
ぶっちゃけ勢いに任せた部分がでかいのは確かだがよく納得してくれた。
この子たちもやっぱりそう言う経験があったのかもしれないがやっぱりいい子達だ。
『クァッハー!随分景気いいこと言うけど結局は俺任せのつもりだろう相棒!調子いいねぇ。まぁ俺も好きに暴れられるなら文句はねぇけどなぁ!』
その通りではあるがいちいち癪にさわるやつだ。
俺の体で暴れさせてやるのだから黙っていろと言いたい。
正直これから始まる戦いが怖くてたまらないがそれを表に出すことは許されない。
そんな気持ちをあざ笑うかのように白は笑った。
『たくっクァハッ死ぬほどダッセェな!器も小さい!その上愚か!こんなんが俺の主人だと思うと羞恥心で死にそうだぜ!だがまぁ安心しろ今の状況は悪くない。今のレベルと備え、それから回復薬もいる。まぁ余裕だろ。』
余裕という言葉に対してより俺が主人という認識があることに安心した。
その安心が隙を生んだのだろう体が白に乗っ取られた。
歌を口ずさみながらいきなり駆け出した。
「ちょっ!?待ってよ!」
驚いているシロナを無視して普段の俺からは想像できないありえない速度で駆け抜ける。
門を抜け平原を抜け山を駆け抜ける。どうやら敵の位置はもうすでに捉えているようだ。
そうしてたどり着いたその場所は明らかに王都の人口より多いまさに一国の軍と言える有様だった。
なぜ息切れひとつしていないのかとか、シロナを置いてきてしまったら意味も半減だし回復薬がいなくても平気なのかとかそんなことは頭のそこから吹き飛んだ。
無理だ。こんなのは。絶望に頭が真っ白になる俺と反対に白の喜びが俺にまで伝わってきた。
「パーティーの始まりだ!歌えや踊れ!狂い咲け!ジャララーンジャラララーララ♫」
そうして始まったのは一人の人間による蹂躙劇だった。
武器など使いもしなかった。
ただただ戦闘を、殺戮を楽しんでいた。
目をえぐり取り心臓を抜き取り鬼のハラワタを引きずり出し以上な力で掴み取った石や骨、得物を投げ相手の攻撃はアイテムボックスの敵の亡骸で防ぐ。
鬼たちは途中から逃げ惑い出す鬼と俺を殺そうとする鬼でまとまりにがなくなりだし転げた鬼を踏み殺し高笑いしながらまた歌を歌い出す。
どちらが鬼かわからないような有様だった。
何を心配していたのかと自分に呆れる反面これは俺には無理だわと呆れていた。
暑くって仕方ねぇなと言いながら鬼からえぐりとった心臓を掲げて握りつぶして血を浴びるそんな行動のひとつ一つが鬼の繊維を下げていく。上位種とやらの力の差もわからないほどあっけなく殺していく。
そしてとんでもなく大きい鬼がゆっくり普通の鬼を踏み潰してこちらに歩いてくるが俺はもう恐怖が麻痺してるのかこいつがボスかとしか思わなかった。
「こいつは面倒クセェなぁ。おい相棒ちいといてぇから覚悟してろ!下手したら気が狂う。」
そういって何かを両腕の中にアイテムボックスから埋め込み異物感がひたすら気持ち悪いという思いをしながら白からの初めての忠告に恐れを抱いた。
白は今までだって十分鬼が狂いそうになるほど痛いことを平気でしていた。
その時一度だって忠告はなかった。なのにだ。これはヤバイ。
使えるかわからなかったがケアーを祈るように念じ続けた。
白は木登りみたいにひょいひょい鬼の体を登り両手を鬼の頭に乗せたそして勢いよく腕に埋め込んでいたそれを手から流し込んだ。
針金だ、すごい胃勢いで手を突き破り腕の中を蠢いている。
痛いなんてものではなかった。
心臓までもがおかしい動きをしているように感じる。
死ぬ、そう思った。
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