第二話主人公の奥さんはお茶目さん
「王族ってもっとでっかい屋敷で何人も使用人侍らせているイメージだったんですが・・・。」
「敬語はいらん!俺は所謂、『普通』って奴に憧れてガキの頃に家出したんだ。そのあと色々あって冒険者として大成した後も色々あって今では俺は誰よりも自由な存在になったんだ。それで趣味で門兵をしてるってわけだ。」
色々ってなんだ!色々って!その話だけで物語書けるだろうそれ!
しかも趣味で門兵やってるってなんだよ!おそらく神の眼とかいう能力、スキルで人間観察でもしてるんだろう。
趣味がいいとは言えないが関所や要所の守りにはとても役に立ちそうだ。
門兵としてであってもきっと色々ドラマが生まれていそうだな。
「それで面白そうなやつを見つけたら今みたいに深く接触するってわけか?自分で言うのもなんだが異世界人なんてまさにドンピシャって感じか。」
「まあな、でも流石にここまでするのはお前が異世界人だからって理由と俺の目の判断でクリアしてるからだ。そうじゃなきゃいつもは接触だってなるべく避ける。仰々しい態度で周りに接されるのも嫌だからな。」
「たまに来るのか?異世界人ってのは。」
「いや、物語に出てくるくらいだ。無神経なことを言うようだが異世界と聞いてまず思い浮かぶのは世界でただ一人、孤独で頼れる相手がいないってのが浮かんじまってな。これも本人に言うのはなんだが憐憫の情を抱いちまってな。迷惑だったか?」
「いやいや!そんなことないって!助かるよ!」
申し訳なさそうにしながらアギトが伺ってきて俺は慌てて否定した。
確かに本人に言うことではないかもしれないがそれでも本当に善意から心配しての行動だと伝わってくるから安心する。
しかも実際その通りだし助かる。
「実際問題わからないことばかりで途方にくれるだったろうことは俺が一番わかるって!ジョブやスキルのこともそうだけど言語とか文字について確かめたいこととかこの世界について色々聞けるのは助かる。」
実は今俺たちは会話が成立してはいるものの俺自身んそのことが不思議で仕方ない。最初は日本語が通じていると思ったがそうではないようなのだ。映画とかでもうまく声優が声を当ててくれてるから違和感がないがそれと同じで気づくのに遅れたがどうやら口の動きと会っていない。これ文字とかどうなるんだ?今から文字の勉強とかダルっとか思ったり、どうでもいいが歌とかどうなるんだろうとかささやかな疑問が浮かんでいたりする。
それと一番大事だが白魔術師についてとか聞きたい!まじで!切実に!
「ジョブやスキルはともかく言語や文字についてと言うのはよくわからんな文字は書き出せば魂が形となって伝わるし言葉も同じだろう?」
「なにそれ!?じゃあ赤ちゃんとか生まれてきた時から喋るの!?あと言い回しとか統一されてんの?歌とかどう言う風に聞こえんの!?」
なにそれ!?まじで!?赤ちゃんに関してはどうだこうだ言うのは賛否両論あるだろうから突っ込みたくないけど。言語の統一化に関してはこの世界つまんな!日本語がどれだけ面白いか世界にはわからんのか!?
あと怖すぎて聞けないが暗号とかどうなるんだ?
王族には聞けねぇよ!
「いや、流石に三つにもならなければ魂を形して会話する精神を形成できんだろう。それに知性や魂の形で言い回しは変わってくる。だから歌なんかは意味は伝わるが個人によって聞こえ方は変わってくる。この場合は聴き手ではなく歌い手の個性だな。」
よくわからん!わからんがそう言うことらしい。
ともかく文字は問題ないことがわかって安心した。
「それでジョブやスキルについてだがこっちは真面目な話、異世界人であるお前さんとこの世界の白魔術師は別物だ。この世界の白魔術師は攻撃魔法も使える回復職だがお前さんのはさっぱりわからん。気分を上昇させる魔法ってなんだ?」
「こっちが聞きたいわ!」
薄々予想はしていたがやっぱりか!チクショウ!
でもある意味そう言うところが主人公っぽくてちょっと嬉しい自分もいて悔しい!
そんなことを話していたが実は先ほどからちょっとご家族の皆さん遅いなと思ってちょくちょく出入り口を確認していたのだがその時親子四人で俺から隠れる遊びをしてるらしい奥さんと子供達を見つけて微笑ましい気分になった。
どうやら相当お茶目な家族のようだ。
あ、奥さんはどうやら俺が気付いてることに気づいているようだ。
こちらにウインクしてきた。
そして挨拶してくれた女の子確か名前はシツカちゃんだったか、と目があった。
手を振るとニパッと笑って兄弟たちと手を繋いできゃっきゃと寄ってきた。
「お父さん!読んできたよ!」
アギトがわちゃわちゃと子供たちとじゃれあっているのを微笑ましく思いながら見ていると奥さんがアギトの隣の椅子に座り慌てて挨拶する。
「初めまして!異世界から来ましたジンです!」
なんか宇宙から来たって変換してもおかしくないようなテンパった挨拶をしてしまった俺にただニッコリと笑みを浮かべる奥さん。
これはどっちだ!?
受け入れられてるにしては笑顔だけで返事はない。
は?とか、はい?みたいな反応ならまだいいが拒絶の意思だったらどうしよう。
俺が冷や汗をダラダラと流しながら視線をあちこちに彷徨わせていると奥さんがクスッと笑いをこぼした。
「ごめんなさいねぇ。この人が連れてきた割に随分可愛らしい反応をするものだからついからかってしまったわ。私はミーシャ、この人の妻よ。ちなみにどう言う状況かは何にも理解できてないわ。どうしましょう?」
悪く取られていなかったのは良かったがどうしましょうと言われても俺自体がどうしていいかわからないんだが!?
「えっとですね。旦那さんが俺の現状を不憫に思ってくれて招待してくださったという感じだと思います。」
しばらく無言が続く。
俺が目で助けを求めてもアギトは気づかない。
た・す・け・て・く・れ!
あれ?今目があったよな!?なんで!?おい!?嘘だろ!?
そうしてしばらく俺と奥さんの間に気まずい沈黙が漂っている中、以外なところから助け船がきた。シツカちゃんだ。
「お父さんお母さんあんまりいじめるとジンさんがかわいそうだよ。」
「いやあ母さんが楽しそうだからつい、な?」
「ふふふ、だって可愛いんですもの。」
「もう、二人ともメッだよ?」
まじか、わざとか。良かったぁ。ドッキドキでしたわ。もうバックバク。
シツカちゃんまじ天使!いや女神!救いの女神だわぁ。
でもこれでようやく話が進みそうで一安心だ。
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