最狂の白魔術師 その白魔術の使い方は狂ってやがる

仇桜

第1話 俺の異世界転生が色々と思っていたのと違うんだが!!!

白い部屋、異世界転生のテンプレで男の夢。

スローライフだなんだ現実がなんだ言う奴もいるがそう言う主人公に憧れない男なんていないだろう。


まあ確かに現実ってやつは厳しい。

だけどもう白い部屋に来ちまったらもう現実なんて吹っ飛ぶ。


もう自分を主人公だと疑うこともしない。

もうここからは御都合主義の俺無双の始まりだ。


壁に来世のキャラクター情報を書き込めって掘られてる。

うおー、めっちゃ興奮する。


書き込めるのは名前とジョブか。

うん、チートはなくてもいい、なぜなら俺は主人公だから。

とりあえず名前はジン・ストレート、こんなもんあとで偽名でも考えればいい。

俺は普段名前にめっちゃ時間かけてつけるが今は軽く焦っている。


これが夢だったら時間をかければかけるほど夢はすぐ終わる。

同じ夢を見ようとしても大体二度寝した先はちょっと変わってる。

繋がっているが違う。


だから早くしなければジョブもすぐに決めてしまおう焦ってヒーラーと書いたらヒーラーの文字が赤くなって消えた。


曖昧すぎてダメってことか?


すぐに俺がやっているゲームの王道のヒーラー職である白魔術師を書き込んだ。

すると風景が変わり俺は森の中にいた。

『ようこそ、ジン・ストレート』と言う文字がSFちっくに現れ消えていった。

そんなことはどうでもよかったのでステータスと必死こいて念じた。


『ステータス ジン・ストレート24歳(固定)ジョブ:白魔術師レベル1使える魔法:ケアー(内容:気分を上昇させる*使いすぎには注意)sp0』


惜しい一文字違えば体を回復させる魔法だったのに。

とはいえやばくないか、森の中で何にもなしで気分を上昇させる魔法のみって。


「ケアー!」


気持ちがざわつきだしたのでとりあえず使ってみた。


「うん!テンションが上がった!伝説のヒノキの棒を探そう!ついでに街!ついでにケアー!」


歌いながら森を歩き木の棒をより良いものに変えてケアー!と叫ぶ。

声に近寄ってきた獣をケアー!の掛け声とともに蹴っ飛ばす棒より足の方が早い。

日が暮れても大丈夫ケアー!と唱えれば怖くはないし腹が減ったと笑って歌い、街の近くまでたどり着きもう一度ケアーと叫ぼうとしたら意識を失った。


どうやら魔力切れを起こしてしまったらしい。


早朝槍の石突きで突かれて起こされた。

思い返すとやばかった。

完全に酔っ払っていた俺であった。

薬をやったことはないので分からないが薬が決まった状況みたいに見えたのだろうか。

酔っ払いのがマシだ。

うん、酔っ払いの範疇にしておこうあれぐらい酔った事あるし。

今回は吐かなかったしマシな方だ。


「おい、起きたのなら返事をしろ!大丈夫か?」


どうやら考えている間に心配をかけてしまったらしい。申し訳ないことをしてしまった。


「すみません。ぼーっとしてました。」


「そんなにボロボロで何があった。」


確かに俺はボロボロだ。

ケアーのおかげで今まで気づかなかったが気づいたら一気に疲れと痛みが。


「お、おい大丈夫か?とりあえず中に入って水でも飲め。」


普通文明レベルが低いと飲める水は貴重でお高い、酒の方が安いなんてのも聞いたことがあった。知らんけど。


「え、いいんですか?」


軽く驚いてしまって反応が鈍い俺に彼はいいからいいからと気さくな笑みを浮かべ連れて行かれた。


「それで、お前さんはどこから来たんだ?」


街の門を守る兵の一人と思しき青年は人の良さそうな笑顔を浮かべて訊いてきた。

嘘をつく必要性よりも嘘をついたときのデメリットを考えた結果素直に日本と言う島国と答えた。

この街が海からどれだけ離れているかなどは分からない。

故により疑われる可能性も高くて危険ではあったが近くの村などと言って嘘がバレた時危険だし別の国からと言う線は論外だ。

間者だなんだと危険すぎるし、この街は巻き込まれていないがどこかの国と戦争中とかだとやばい。

それで結局どれもリスキーで疑わしいなら無理に話を作らず流れに乗ってその場をしのぐことに決めた。


案の定、腕組みをして唸りだした彼の反応を見る限り海はこの街からだいぶ離れているのだろう。

それはこちらのことを信じている半分信じられないという感情が読み取れる。

逆に彼は何を根拠に俺の日本と言う島国から来たという答えに信憑性を得ているのかはテンプレ的な魔法の類だと予測できないから気持ち踊る半分不安だ。


「お前さんが言っている島国から来たというのが本当だとして現に今お前がここにいる心当たりはあるか?」


どういうことだろうかそれ以前にこの国の言葉が話せている俺を島国、それもおそらくかなり遠いところにある海の向こうから来た人間と仮定できるのだろうか?

これはやはりテンプレ説が高い。


「なんか白い部屋の文字盤いじったからだと思います。」


「あー、多分それだろ。お前これからどうすんだよまじで。」


どうやら信じてくれたらしい。

しかもテンプレで転移トラップにハマったドジ認定。

彼はどうやらものすごい善人のようで自分のことのように頭を抱えて嘆いている。

異世界人がかつてめちゃくちゃしたせいで扱いが面倒とかの反応じゃなくてよかった。

ついでによくある大陸の外から来たものは邪悪みたいな宗教的なアレもなくてさらにラッキー。

今思えばかなり危ない橋だったな。

嘘ついた方がましだったかもしれないが結果的には魔法的なテンプレのアレで嘘つかなかったのが吉と出た。

と、そんなことを考えている間に彼の中で完結したらしくさっきとは打って変わって晴れ晴れとした笑顔で彼は言った。


「とりあえずしばらくの間は家に来い。」


「え?どうしてそうなる?」


困惑が口をついて出る。

それはそうだろうこんな身元不明で何一つわかっていない男を自分の家に招き入れる?善人を通り越してバカなんじゃなかろうか。

逆に心配になってくる。


「失礼だけどあんたもっと警戒心てモノを持てよ。いつか痛い目見るぞ?心配になる。俺としてはありがたいけどお人好しすぎて逆に信用できない。」


「マジで失礼なこと言うなお前さん。だが言いたいことはわかる。だから言うが俺は『神の眼』ってスキルを持っててな、そこらへん全て見えるから平気平気嫁さんと子供たちも俺が大丈夫って言えば納得する。」


マジか、尚更マジか。奥さんと子供いるのにこんなイかれた行動出来るのも理解できないがそれを置いといてなんか俺より主人公みたいなチート持ってるのが納得いかない。


この流れやばくない? 

門兵の彼の名前はアギトと名乗った。

『神槍」の二つ名で呼ばれているができればそう呼ぶのはやめてほしいと言ってきた。


やばい、多分やばい流れだ。


明らかにショボい自分の能力とそれを自覚させてくるチートキャラ、もしやこれは現実に打ちひしがれてどん底に落とされるパターンでは?


それの証拠にレベルが8まで上がったが増えた魔法はサーチという索敵や鑑定用の魔法とストレージというアイテムボックスの魔法だけ。


どういうことだよ!


とても便利で嬉しいけどもせめて何かしらの回復魔法であれと俺は言いたい。


もしかしてヒーラー系のジョブではないのではないかと一瞬考えがよぎったが俺は騙されない!

だって最初の魔法がそれっぽいじゃん!ショボいけど!

もしかしたらそういう思考に陥らせる罠かもしれないがジョブが騙してくるって何!?

流石にないと信じたい。


「ついたぞ、ここだ。」


そう言われてたどり着いたのは綺麗な庭付きの家だった。

俺が思うに普通の門兵が持てるような家ではない気がする。

普通の門兵の収入なんて知らんけど。


「おとーさーん!どうしたの?お仕事は?」


目をキラッキラさせてアギトに娘さんらしい少女が抱きつく。

どうやら娘さんはお父さんしか目に入っていないようで俺は空気に徹する。

俺は子供のことは好きだが慣れるまで人見知りするのだ。

ちなみにクソガキ相手だと同じレベルまで落ちて喧嘩になり場合によっては俺の方が泣かされる。


「面白いやついたから連れてきた。だから今日はお仕事おしまいだ。ちゃんと挨拶しなさいシツカ。」


それでいいのかお父さん!と思いながらも密かに緊張している俺にシツカちゃんはキョトンとした後ハッとなってチョコンと可愛らしくカーテーシーとかいうものだと思う挨拶をしてくれた。


「こんにちはシツカ・クロックハートです8歳です。」


思ったより貴族っぽい対応に余計にテンパりながら無難に「こんにちわシツカちゃんジンです。」と返した。


「なんとジンは別の世界から来たんだぞ。これから家で世話をするから母さんたちを呼んで客間に集まってくれ。」


シツカちゃんは再び、というより先ほどよりも輝きを増したニッコニコの笑顔になって「わかった!」と言って走っていった。


てか異世界人ってバレてるし『神の眼』ってどこまで見えんの?怖えよ!


それより今のうちに聞いとかないとタイミング逃しそうだったので貴族かどうか聞いてみたらまさかの「王族だ。」との返事。


王族で神の眼持ちで神槍の二つ名持ちの門兵ってどこの主人公だよ。


多分これから関わっていくに連れそういう主人公要素とかもっとでてくるんだろうなぁ。

それで主人公感キラッキラ出して俺はモブ感を味わっていくのだろう。

わかる、この流れはもう俺は引き立て役でしかない。

破滅フラグは避けていこう。


残念!


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