第七話 過去

「お姉ちゃん大すきぃ!」


 そういいながらミドリは僕に抱きつき、胸に顔を押し当ててグリグリしてきた。しばらくそうして満足すると満面の笑みで僕を見上げる。


「わたし、ね、わたしも、おねえちゃんみたい、に、なり、たいっ」


「なにを言ってるんだ、ミドリはミドリでいいんだよ。僕みたいになる必要はない」


「いやだっ。わたしは、おねえちゃんになる! 名前だってアオイがいいっ!」


「ミドリだってとってもいい名前じゃないか。せっかく父さんと母さんが付けてくれたんだからさ」


 僕の事が大好きで僕になりたいなんて駄々をこねる。そんなことは不可能なのだからミドリにはミドリらしくして欲しいと思う。ミドリという名前だってとても素敵だ。


「みっミドリって、なんか響きもお婆ちゃんみたいだし、色もなんかいまいちだし……藍は響きも色もかっこいいもん。だからミドリはアオイがいいっ」


「僕はこの名前が大好きだけど、ミドリだってとっても綺麗な色だよ。透明感があって美しい宝石が由来しているんだ。母さんに聞いたことあるだろ?」


「そっ、そう、だけど、でも」


 ミドリは昔から自分に自信が無くて、僕に憧れを抱いていた。年齢よりも少しだけ幼く見えて、しゃべり方もたどたどしい。

 勉強も得意とはいえず、体力もない。そのせいか、大抵の事を上手に熟せる僕が羨ましいのだろう。


「ミドリは何で僕が羨ましいんだい?」


 優しく声をかけると、ミドリは俯いてしまった。


「だって、お姉ちゃん、明るいし、元気だし、とっ、友達も多いし、うっ羨ましい」


 学校でも上手くいっていないようだ。僕がなんとかしてあげたいけれど、こればかりは自分でなんとかするほかない。


「ねえミドリ。友達と上手くいってない?」


「うっ、うん。いって、ない」


「うまくいかない原因は自分でわかるかな?」


「わか……らない」


 そしてミドリはすぐに嘘をつく。自分でもちゃんと分かっているはずなのに、自分の事を見ないふりしている。


「嘘言ってもお姉ちゃんには通じないぞっ」


「ひぅっ…………あっ、あのね、友達に鉛筆借りたの……それで、怒られて、嫌われて」


「ミドリ。怒らないから正直に言って。友達の鉛筆を盗んでしまったんだね」


 僕がそう言うと、しばらくの沈黙が続き、ミドリは小さく頭を垂れた。


「……ぅん」


「人の物を盗むのはとっても悪いことなんだ。だけどね、ちゃんと謝れば赦して貰える。だからお姉ちゃんと一緒に謝りにいこう」


 優しく言いながら頭を撫でる。頭ごなしに叱っても意味は無い。そう思ったのにミドリは


「いっ、いやだ! 私、盗んで、ない! 借りた、だけだもんっ」


 逃げてしまった。追いかけて捕まえる事は簡単だけれど、それをしても意味は無い気がした。ミドリが自分自身と向き合うには時間が必要なのかもしれない。なんとか出来ないものかと思案した。




◇◇◇◇◇◇




「お姉ちゃん大好きっ!」


 ミドリは今日も僕の胸に顔をうずめる。


「ミドリは、なんでそんなに僕が好きなんだ?」


「だって、お姉ちゃんは、綺麗だし、なんでも、できるし、完璧で、すごい、から」


「はぁ、言っておくけどなミドリ。僕はミドリが思っている程完璧じゃないし、間違いだって沢山する」


 ミドリは僕を完璧人間だと思い込んでいた。実際にはそんなことはない。自分の駄目なところを力説するのはイヤだけれど、ミドリに自信をつけて欲しい。だからあまり話したくないことも話そう。


「間違い、なに?」


「ああ、んん、間違いって訳でもないんだけど、その……」


 やっぱり言いたくない。それなのにミドリは期待した目で僕をみている。しかたない。軽く咳払いをしてから僕は意を決した。


「何を隠そう、僕は昨日告白してフラれたばかりだっ! どうだ驚いた!?」


 こんな事は満を持して言うことじゃない。衝撃の事実を教えてあげると、ミドリは期待していたリアクションではなく、ププっと笑いを堪えた。


「なっ、なにが可笑しいのかな?」


「だって、お姉ちゃん、女の子に告白してフラれるの、何回目?」


「それはだなぁ、ええっと、たしか……って数えさせるな! 成功したことだってちゃんとあるしっ」


「ふっ、ふつうに男の子に、告白すれば、いいのに……」


「うるさいなぁ、これは僕の個性なのっ。僕はぼくらしく振る舞ってるだけだし、僕は間違っていないっ。だからミドリだって自分の思うように正しく振る舞えばいいんだ」


「そっ、そうかなぁ」


「そうだよ」


 本当にそう思っていた。だから僕はミドリの頭を撫でながら言った。


「いいかいミドリ。間違っていない言葉は強く正しい。だからミドリも嘘は……」


「でも、そっかぁ。そうだよね、あは、あははは。本当だぁ、お姉ちゃんも、完璧じゃなかった。あはははっ。そういえば自分のこと僕って言う女の子もいないし、お姉ちゃん、あはは、変わり者だぁ」


 珍しくお腹を抱えて大笑いするミドリだった。僕はフラれたばかりで傷心だというのに、ここまで笑われるとは思わなかった。


「完璧じゃない、お姉ちゃんも、大好き」


 そう言ってまた僕の胸にうずまる。僕はミドリを優しく抱きしめた。


「それで、その次は? お姉ちゃん」


「なんだい次って」


「フラれちゃった後……やっぱりその子とは変な、関係になったり、きっ、嫌われたりしなかった?」


「そんな事はないよ。普通に今までどおり仲良しの友達さ。僕は恋心は抱いても下心は抱かない。そんな紳士な人間だからねっ。いやそこは淑女か」


 そう言うと、ミドリは少しだけ暗い顔になった。


「やっぱり、お姉ちゃん、完璧だなぁ……わたし、やっぱり、おねえちゃんに、なりたい」


「ミドリはミドリでいいんだよ」


 もう一度ミドリを強く抱きしめた。

 大丈夫きっと全部上手くいく。ミドリもそのうち自信を持てるようになる。そうすれば嘘もつかなくなる。そう思った。




◇◇◇◇◇◇




 そんな、ある日のことだった。僕は誕生日に両親からペンダントを貰った。とっても綺麗なラピスラズリがあしらわれている。瑠璃色よりももっと深く青い、藍色のペンダントだ。僕が藍という色が好きなことを知っていて、これをプレゼントしてくれた。とっても大事な物、一生の宝物にすると決めた。


 それなのに……


「お、ねえちゃん、何それ!? 凄い、綺麗……」


 うっとりとした目で、僕のペンダントを眺め始めた。なにか嫌な予感がする。


「父さんと母さんが誕生日プレゼントでくれたんだ。いいでしょう。一生の宝物だよ」


「ほしぃ……ほしぃ……」


「いや、聞いてた? あげないよ?」


 目をキラキラに輝かせながら懇願された。たった今誕生日プレゼントで貰ったと言ったばかりの、一生の宝物だといったばかりのペンダントが欲しいと言う。正直、信じられない。


「でも欲しいっ! お姉ちゃん頂戴っ! なっ、なんでも言うこと聞くから! お姉ちゃんっ、 お願い、 お願いっ」


 どんなに懇願されたって絶対にあげる訳がない。そもそも、誕生日プレゼントを人にあげるなんて聞いたこともない。ないけれど……


 気になる一言があった。


「ミドリっ、今なんでも言うことを聞くって言った?」


「いっ、言ったよ」


 ミドリが何でも言うことをきく。これはチャンスかもしれないと思った。どれだけ僕が言ってもミドリは学校をサボってばかり、嘘もつくし、人の物を盗む。

 僕がこれだけ大切に思っているペンダントと引き換えにすればもしかして……


「ミドリ、このペンダントは本当に大切なものなんだ。誰かにあげることなんて絶対にない」


「お姉ちゃん、でも、わた、し……」


 葛藤がない訳がない。絶対にあげたくない。あげたくないけれど、これでミドリに自信がつくのだったら。ミドリがまっすぐに生きる。その切っ掛けになるのだったら……


「絶対にあげたくないけど、それでもミドリが僕と約束してくれるならっ」


「約束する! お姉ちゃんと約束するよ!!!」


「じゃあミドリ、約束だ。これからミドリは絶対に嘘をつかない。人の物を盗らない。ミドリらしくまっすぐに生きる。お姉ちゃんとの約束……」


 ゆっくりとミドリの首にペンダントをかけてあげた。目を輝かせて、心から嬉しそうな顔だった。


「わた、わたし。もう絶対に嘘つかない! 盗んだりしないよ! お姉ちゃん、ありがとうっ! 大好き!」


「ああ、僕もミドリが大好きだ。だから約束破ったら赦さないからね」


 こうして一生の宝物は一瞬でミドリの物になった。両親になんと説明しようか。後悔もあるけれど、これでミドリがまっすぐに生きられるなら安いものだ。

 来年の誕生日にまた買って貰おうか。そんな厚かましいことを考えながら、ミドリが自信満々に学校に行く姿を想像してしまう。きっと全部上手くいく。そんな甘い夢をみていた……




◇◇◇◇◇◇




 学校から帰ると家の中が騒然としていた。バチンと大きな音がして父さんがミドリの頬をたたく。大きな泣き声が家中に響き渡ったから僕は急いでミドリの部屋に入った。そうしたら……


「うわぁぁぁぁっ わだ、じぃ、悪くないもんっ!! いだいっいだいよぉ!」


「どうしたの、ミドリ!? それに父さん!?」


「アオイか、これはその」


 ミドリの頬が腫れている。父さんは娘の顔を叩いた事が後ろめたいのか俯いてしまった。母さんは泣いているだけだ。


「何があったの父さん!? なんでミドリを?」


「………………」


「わだじわるぐないもんっ、いだいよぉ、おねえちゃんたすけ、たすけでぇっ」


 父さんは口を開いてくれなかった。母さんも泣いていて何も聞けない。だったら本人に聞くしかない。


「ミドリ何があったの? 正直に僕に教えて」


 嫌な予感がして、お腹の奥底にいやな感情が湧いてくる。


「わだじ、盗んでないもん!! どうしてもほじかったんだもんっ!!」


 そのお腹の奥底のグツグツが段々と上に登ってきて僕の胸を圧迫する。あぁ、ミドリは……


「うっ、うそだよね……ミドリ……うそ…………でしょ?」


 嘘は大嫌いだ。それなのにこの現実だけは嘘であって欲しかった。


「さっき、お店から連絡があったんだ。父さんがお店に行って店員さんに謝ってきた」


 父さんがごくごく端的にあったことを教えてくれた。聞かなくったってわかる。聞きたくなかった。


「わだじは悪くないっ! 盗んでないもんっ! いだいっよぉ おねぇちゃんだずけてよぉ」


 多分無意識だったと思う。言葉に出来ない嫌な感情が身体を支配して、僕の手を勝手に動かす。苛立ちとか怒りとか後悔とか、そんなものがゴチャゴチャになって心を埋め尽くしていった。


「やく……そく、したのに…………うそ……つき  このうそつきっ!!!!!」



 僕はミドリの頬を思いきり叩いてしまった。どう、感情を抑え込めばいいのか分からない。


「いやぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


 僕はいつだってミドリに優しくし接してきた。どんなに過ちを犯したって、優しく諭した。多分ミドリは僕なら助けてくれると、味方になってくれると思っていたんだ。

 そんな僕にまで叩かれたのがショックで半ばパニック状態になってしまった。


「おねえちゃんなんてっっ!!! だいっぎらいだぁぁぁ!!!!! うあああああああぁぁぁぁぁ」


 ミドリは机の上に乗っていたラピスラズリのペンダントを強引に取ると、部屋を飛び出した。廊下の途中に置いてある家具やら何やらを根こそぎ倒していき、追ってこられないようにする。


「まってミドリ! ちゃんと、ちゃんと謝らないと!!!」


 そんな声が届くわけもなく、ミドリは家を出た。外は大雨で視界も悪い。どこに行ったのか見失ってしまった。父さんと母さんと僕とで手分けして探したけれど中々見つけられなかった。どこをどう探したかは憶えていない。


 そして、とっても嫌な予感がした。胸騒ぎがしたから僕はあそこにいった。生活圏にある唯一の危険な場所。そしてミドリの好きな場所。


 少しだけ山間に入った所、渓谷の下には流れの速い川がある。晴れの日なら絶景で、たまにミドリと来ていた。安全柵を乗り越えた向こう側。その崖のふちには一本の大木が立っていて……

 その木の上に探し続けていたミドリがいた。



 ミドリは家を飛び出して直ぐに、ここに向かっていたんだ。



「おっ、お姉ちゃん? な、なんでここが分かったの?」


 そのミドリとは、まだ距離がある。木の上から落ちてしまえば川に落ちるかもしれない。だから僕は慎重になった。


「ミドリっ、もう、もう分かったから。すぐにそこから降りてっ」


「ちっ、違うのこれは、お姉ちゃんに怒られて、イライラしてペンダント振り回してたら木の枝に引っかかっちゃって!」



 嘘だ。この話は嘘の話。真実は違う。



「もういいから、直ぐにそこからおりて、全部分かってるからっ!」


 僕はミドリの事ならなんだって分かる。わざと木の枝にペンダントを引っかけて。その後に僕を呼んで。あれを取ってって言って。喧嘩をした僕を困らせようとしたんだ。僕は嘘が嫌いだ。嘘吐きが嫌いだ。大嫌いだ。木の枝にペンダントを引っかける。その途中の姿を見られたもんだから。とっさに嘘をついた。


「今そこに行くから、動かないでっ!」


 そう言った瞬間だった。ミドリが登った木がミシミシと音を立てる。根が腐っていたのかもしれない。急がないとっ、そう思って僕は木のもとへ走った。


「お姉ちゃん!? おねぇちゃん!? 何で? いやぁ! いやぁぁぁ!!!!」


 やっとの事で木の下までたどり着いたのに、ゆっくりと倒れていく。崖の方へと。何とか倒れないように大木を支えるけれど、支えられる訳がない。


 だから僕は手を伸ばした。ミドリの方に精一杯伸ばした。


「ミドリっ!! こっちに飛んで手を伸ばすんだ! 僕の手を握ってっ!」


 全力で手を伸ばした。ゆっくりとスローモーションの様に木と一緒にミドリが落ちてゆく。僕の指先とミドリの指先とがわずかに触れる。だけど…………だけど僕はその手を掴むことが出来なかった。



 下は流れの速い川だ…………




 ミドリが見つかることはなかった




◇◇◇◇◇◇




「いやぁぁぁっ!!! なんで!? なんでこうなるのよっ!!!! 何で!? なんでなのよあなたっ!! なんとか言ってよ!!! 何で…………なんでぇ!!!! あぁぁぁぁぁぁ」


「そんな事は分からない! 分からないっ! どうしたらいいか分からない……」


 泣き叫んでいる母さん。頭を抱える父さん。あれ以来、僕の両親は少しだけ、おかしくなってしまった。だから僕がしっかりしないといけない。そう思う様になった。


「大丈夫だよ父さん! 母さん! 僕がついているから。僕がミドリの分まで二人を支えるから! ミドリのことはとても悲しいけど、仕方のないことだった! これは事故だったから誰も悪くないっ! だから自分を責めないで!」


「なんでぇ、なんでぇ、ミドリいぃぃ、なんでなのよぉ」


 どれだけ慰めても、ミドリが死んでしまった過去は変わらない。母さんは目の前の事実を受け入れたくないのだと思う。

 母さんは悪くない。父さんも悪くない。勿論僕だって……そうだ、悪いのは


「ミドリは嘘吐きだった。だからこれは自業自得だったんだっ! だから、だから父さんも母さんも僕だって、だれも悪くないから!!! だからもう泣かないで母さんっ」


 僕は泣きじゃくる母さんを宥めるために、抱きしめてそう言った。それでも母さんは泣き止まなかった。僕にはこれ以上、どうしたらいいのか分からなかった……




◇◇◇◇◇◇




「これが僕と僕の大切だった妹の話だ。このペンダントは僕の大切な物で、ミドリの大切だったもの」


 胸のペンダントをぎゅっと握り絞める。アイの顔を見ると寂しそうに見えた。


「それがアオイの過去なんだね……アオイは両親のことが大切なの?」


 アイが僕にそんな事をいう。大切に決まっている、当たり前だ。父さんと母さんにはもう僕しかいない。


「大切だよ。僕が支えないといけない。だから二人には弱い姿をみせたくないんだ」


 暫く沈黙がつづいた。アイは僕に全てを吐き出させたのに、何も言ってくれない。そう思った頃に重い口が開いた。


「ねぇアオイ? そのお話、少しだけおかしくない?」


「はぁっ!? おかしい?」


 思わず声を荒らげてしまう。すべてを話したのに、アイは何がおかしいというのか。それが理解出来なかった。

 アイは困った様な仕草で口を開いた。


「そういう意味じゃなくてっ、えっと、うーん、そうじゃなくって、その」


 何かを言いよどんでいる。何かを気にしているような感じだった。


「そのね、アオイっ。ミドリは大事な妹だったんだよね?」


「勿論大事さっ」


「だったらその、ミドリにも悪い所はあったけど、死んじゃった子に自業自得なんていうのは……可哀想」


 アイは、寂しそうにそんな事を言った。たしかに自業自得は言い過ぎだったと思う。あの時は頭に過った事をそのまま言ってしまた。

 思ったことを正直に言葉にする。それが正しさだと思っていたけれど、どうやらそれだけでは駄目みたいだ。


「……そうだねアイの言う通りかもしれない。僕も気に病む両親をなんとかしたくてさ、とっさにそんな事言ってしまったのかもしれない。アイの言葉は正しいよ」


「…………」


「そういえばこの頃からだったかな」


「どうしたの?」


 ミドリが死んでから全てが変わってしまった。あの時から僕は……


「この後引っ越して学校も変わったんだ。それまでは全て上手くいっていたのに。ミドリが死んでからは何をやっても上手くいかなくって、今まで出来ていた事が出来なくなって、最近じゃあすっかり自信もなくなっちゃった」


「そっか…………辛かったね」


 アイはまだ何かを言いたそうだけれど何も言わなかった。

 寝転びながら、無言で星空を見つめた。相も変わらず輝き続ける星の海を見ていると、時折流れ星が見える。

 僕の願いはもう分かった。スイをなんとかしてあげたい。ミドリを救えなかった分、せめてスイだけでも……

 流れ星が流れる度に、そんな願いを祈っていたら、いつの間にか忘れていた眠気が戻ってくる。このまま空と星を見ながら、アイとお喋りを続けたいけれど、瞼が重い。段々と思考がおぼつかなくなる。


「アオイ……もう寝よっか」


「…………ぅ……ん。………ゃ……」


 暗闇が僕の意識を奪い去った。
















『うそつき  うそつき   このうそつきっ  おまえがころした  おまえのせいだ  にげるなひきょうものっ』


『おまえが おまえが おまえが ころした ころした ころした』


『お前が殺したんだっ お前が死ねばよかったんだっ この人殺しっ!』

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