7月8日 PM1:10

 十分ほど速歩きで進むとようやくデパートやスーパーなどが陳列する大通りに入った。最近は一週間分くらいを買いだめするのが勉の主流のため、業務用スーパーを選んでいる。


 スポーツドリンクは2本、インスタントコーヒーがきれているからお得用パックを...。ウインナーはよく食べるからたくさん買ってっと...。うん。こんくらいでいいかな。

 カートには今日から大体一週間分の食材がどっさり乗せられている。こんだけ買って今回の合計金額が5327円だ。一人暮らしに優しすぎる金額設定で毎度毎度助かっている。

 しかし、安くて多量なのは節約としてはいいが、問題は重量だ。袋1つになんとかまとめることはできだが、やはり重い。力はあるほうだと自分では思っているのだが、重いものは重い。毎度のことながら車が欲しくなる。それかタクシーを使って楽をしようかと煩悩ぼんのうが湧くが、せっかく食費を浮かせたのに移動費でその分使ってしまっては元も子もない。なので毎度この重たい袋を片手に家までの約5キロメートルを歩いている。今日はいつもよりは軽いほうだから楽ではあると思う。

 商品の入った袋を右手で持ち顔を上げるとベージュのTシャツを着た青年が自転車の隣で紙袋を3つと大きめの立方体くらいの発泡スチロールを地面に置いて何か悩んでいる様子だった。そしてその青年にはなんとなく見覚えがある。

 よく見ると彼は青年と呼んでいいのかわからない26歳というギリギリな年齢の俺のアルバイト勤務先のマスター、澤村豊さわむらゆたかだった。ここで無視するのも悪いから、声くらい掛けとくか。

「あのー、こんにちは。どうしたんですかこんなところで紙袋とか地面に置いて」

「あ、愛川おがわくん。君も買い物?」

「はい。今週のご飯を買いにきました。で、マスターは何してるんですか?」

「あー実はね、今日カクテルに使う果物とか氷を買ったんだけど、袋がいつものコンパクトなやつじゃないのに定員さん詰めちゃったから、自転車の籠に入りきらないんだよね」

 眉を掻きながら苦笑いするマスターに対して俺も苦笑するしかなかった。

「じゃあ、俺が一個持ちましょうか?左手空いてるので」

 マスターにはお世話になってるから、ちょっとの手間くらいならと思った。

「いやいやいいよ。そんな悪いし」

「じゃあどうするんですか?氷も果物もこの時期にこうやって放置してたら腐っちゃいますよ」

 七月なのでもう太陽が本領を発揮してきている時期で、食中毒に気をつけるようにマスメディアで喚起かんきしだしている。

「うぅ...、じゃあ、お願いしようかな」

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