第五章 再会と逃走

第51話 まさかここで出会うとは!

貴族で趣味と実益のため魔物研究をしているロナ様が仲間になり、6人で旅をする事になった俺達。

死んでしまったら生き返らせる事が出来ないため、なるべく安全な道を選んで返還場所まで行こうという話になった。

「ロナ様様々やなあ。

おかげで国境とかを通るのも待ち時間とか少のうて助かるわ〜」

「そうだね。ロナ様といるとほぼ顔パスで通る事が出来るからね」

俺達は街々の所属ギルドに寄って依頼を受けつつ、資金を稼ぎながら旅をして、召喚場所と返還場所の中間地点まで半年近くかかってたどり着いた。

のだが⋯、

「何故どこのギルドでもロナ様の依頼しか受けられなかったんだろう⋯」

「そりゃ、指名されてるわ拒否権無いわで受けるしかなかったし、報酬も弾んでもらえたから暮らしも楽になるからじゃねえの?」

ちょっと遠い目をしている俺にドワーフのアトルがツッコミを入れてくる。

そう、どこの街のギルドでも、ロナ様の魔物のフィールドワーク優先で依頼を指名されていて、しかも結構な報酬なので多数決でいつも負ける俺は意見に流されるまま今に至る。

ギルドに顔を出してすぐ、ロナ様が名指しで依頼を出したので翌日の仕事が決まる。

それがここ最近のルーティーンとなってしまった。

「じゃあ、宿屋を決めてそこでご飯にしようか?」

「探すのは任せてや!」

「じゃあその間、俺達は必要な物を買い物しておこうか」

「薬と食料品と、あとココアちゃんのパニーの実ね」

報酬が良いので結構懐が温かいため、他の果物なら20エールもかからないのだが、1個150エールもする高値なパニーの実も躊躇なく購入出来るようになった。


「宗也はーん、宿屋決まったでー!」

猫の手(前足)をブンブン振りながらケットシーのカラチが俺達の所にやってきた。

「ありがとう。買い物も終わったからご飯にしようか」

「俺もう腹ペコペコ〜!」

両手に荷物を持ちながらアトルと俺がカラチと一緒に宿屋へ向かう。

宿屋の一部屋に荷物を置いてから、小生物ココアを入れたカバンを手に一階の食堂の席に座り、皆とメニューを注文して食べ物が来るのを待っていると、後ろの席のお客さんが賑やかに話をしているのが聞こえてきた。

「はー、やっぱりここの料理は美味しいねえ」

「そうですか」

「ほら、この魚料理も美味しいよ。食べて食べて!」

「いえ、私は⋯肉の方が」

「果物ウマウマ」

母親らしき女性と子供位の年齢のフードを被った二人が食事をしているらしいが、女性の声に聞き覚えがある気がする。

飲み物を頼むため席を立ち、失礼と思いつつ隣の席を覗いてみると、

「⋯母さん!?」

「えっ?」

俺の驚きの声に仲間達がこっちを見る。

そこで食事をしていたのは行方不明になっている俺の母だった!

「あら偶然〜。

元気してた?」

数年ぶりの再会に、のほほんとした表情で片手を上げて挨拶している母さん。

「父ちゃんは元気?

まさかアンタもこっちに来てたとはねえ」

ケタケタ笑いながら俺の肩をバシバシ叩く母さん。

この性格、人違いでは無いようだ。

「キュ?

キュキュッ!」

俺達の声に反応したのか、カバンからココアが顔を出してきた。

「あっ!ココア!顔を出すな!」

俺は慌ててココアをカバンの中に入れて隠す。

「ここ⋯あ?

ふぅーん⋯」

顔に指をあてて考えてから母さんは、

「じゃああたし達はこれで。じゃあね〜」

「えっ?

ちょっと母さん!

まだ話したい事が!」

母さんは店員にお金を払ってから、二人と共に食堂の入口に向かいながら、

「魔王城の近くに来たら色々話しましょ。じゃあね〜」

追いかけるが間に合わず、

母さんはそう言って手を振りながら食堂を出ていくのだった。








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