第49話 確保と同行
ロナ様に追いかけられる前に逃げようと街を出たら、泥棒に会い荷物を取り返そうとした俺達。
しかし、ロナ様が乗った馬車が泥棒達を轢いて捕まえ⋯。
「これ、捕まえたって言えるの?」
「荷物は取り返せたんはラッキーやけど、ワテらがロナ様にとっ捕まった感じしかせえへんな⋯」
「あの泥棒さん達、治療しなくていいのかしら⋯」
旭さんが心配そうに言いながら自分の荷物をささっと回収している。
俺達も我に返って自分の荷物を持つと、
「あら、
置いていかれたからか、かなりご立腹な表情で馬車の入り口からこちらを見下ろすロナ様。
あまりの迫力に、
「す、すいませんでした!」
と、その場で土下座して謝った。
「ま、まあ良いですわ。ではこの追い剥ぎは役人に引き渡しますわね」
土下座にちょっと引いたのか、少し緩やかな態度になり執事に役人への伝達を頼む。
「わかりましたお嬢様」
執事さんはペコリとお辞儀をしてから馬に乗り、街の方へと走らせる。
「では
と、言いかけて、
「あら、馬が一頭しかいないのでは馬車を動かす事が出来ませんわね。どうしましょう?」
と、ちょっと困った表情をする。
(この方、天然?)
俺以外もそう思ったらしく、えっ?という表情をしている。
「ホイホイッ!
縄で括ったで〜。
荷物もここに全部揃ってるで〜」
カラチが器用に泥棒を全員縄で括り、荷物も全部取り返した。
あ、そういえば、
「旭さんともう1人の泥棒を連れてこないと」
「泥棒を追っかけてて忘れてたな」
俺とアトルで旭さんの所まで戻ると、
「遅い!」
仁王立ちの旭さんに怒られてしまった。
「ごめんごめん。
こっちはとりあえず泥棒を捕まえたから荷物は大丈夫だよ。
さあ、合流しようか」
俺がジャララさんの荷物を、アトルが泥棒の縄を掴んで⋯、
「よいしょっと」
縄でぐるぐる巻きの泥棒を米俵みたいに背負う。
「⋯大丈夫?」
「へーきへーき。こんなの軽い軽い!」
心配そうに旭さんが見ているが、
「⋯めっちゃ、重いんだけど、この、荷物!」
腰を痛めてしまいそうな重量の荷物を背負ってヨタヨタと俺が歩き出す。
「大丈夫?ジャララ呼んでくる?」
旭さんの提案にすかさずお願いする俺だった。
「すまんなあ宗也はん。
ウチの荷物重かったやろ?」
戻ってきたジャララさんは軽々と俺から荷物を受け取る。
(何であんなに重い物を軽々と持てるんだ!?)
自分で自分の肩を揉みながら、スイスイ進むジャララさんの後を追って俺も馬車の所まで戻った。
「ロナ様、怪我をした泥棒達の手当てをお願いしてもよいですか?」
「もちろん、その辺りも抜かりなく役人に伝えるように執事に申しましたわ」
一応怪我を治してくれるようなので、俺は罪悪感が軽くなるのだった。
いや、轢いた当人であるロナ様が何も感じていないのも問題なのかもしれないが、下手に何も言えない俺だった。
全員で荷物の中身が減っていないかを確認していると、
「キュー!」
怖かったのか、ココアがバックの中から俺の懐に飛び出してきた。
「おや、この生物は?」
ロナ様が俺のそばまでソソッと寄ってきて、メガネをクイッと上げてココアをじっくり観察する。
「あ、この子は魔物じゃ」
「⋯見た事無い生き物ですわね。魔物の調査資料にも情報が無かったですわ」
「えっ?あっ!」
ロナ様はヒョイっとココアを抱き上げて、上から下までじっくりと見ている。
ちょっと困った表情でココアが俺に助けを求めている⋯気がする。
「ふむ⋯これは⋯調べがいがありそうですわ!」
嬉しそうにニヤリとした後、
「宗也さん、やはり
世の中知らない事だらけ!
これを調査していけば世の中の生物や魔物の謎も解けそうな気がしますわ!」
と、一人燃えているロナ様を見て、
(あ、これ一緒に行くのを絶対断れなさそう)
と、俺は覚悟を決めるのだった。
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