第48話 逃避行
ギルドに戻った俺達は、簡単な説明をギルドマスターのウルさんに話してから、
さっさと荷物をまとめて旅立つ準備をする。
「なんか夜逃げみたいだな⋯」
「まあ逃げるって意味では合っているかもね」
「もうちょい旨いもん食べたかった〜」
「確かに!」
小声で話しながら準備を終わらせて下のホールへ行くと、女性陣はまだ集まっていなかった。
「ココアー、はい、ご飯だよー」
「キュー!」
小生物のココアにパニーの実を食べさせながら待っていると、
「ふうっ、お待たせ〜!」
「意外と物が多くてまとめるのが大変やったわ〜」
重そうな荷物だが、ジャララさんは軽々と持ち上げている。
「重力制御魔法なんてあるの?」
俺がコソッと旭さんに聞くと、
「そんな便利な魔法無いわよ。アレ、
「自分の力⋯マジ?」
元の世界ではジャララさんは男性と言っていたので、元々の腕力が高かったのかもしれない、と強引に納得した。
「さて、そろそろ行こか?」
「ウルさん、色々とお世話になりました!」
「こっちこそ、色々と揉め事解決してくれてありがとうね。お陰でこの街が平和になったわ。今度はギルドの仕事関係なく遊びに来てね〜」
ギルドの入り口でウルさんと別れ、暗闇に紛れて俺達は次の街へ旅立つ。
素早く街道への道を進み、
「いや、こっちだと気付かれて待ち伏せされているかもしれないからこっちの横道から迂回して進もう」
と、作戦通りに塩湖のそばの道へ進む。
「旭さん、荷物重くない?
俺が持とうか?」
「大丈夫!
それより早く行きましょ!」
走ったり早歩きをしたりして体力を温存しながら行くが、細道から街道に出る直前で魔物が突然現れ、行く手を塞ぐ。
月明かりに照らされたその姿は、
「クマ⋯?」
「デカッ!」
大きさに驚く旭さんに、負けん気が出たのかジャララさんが対抗して、
「うちのトロールの方が!」
と、トロールを呼び出そうとするので、
「大きさ競ってどないすんねん!」
すかさずカラチが止めに入る。
「荷物を
邪魔にならない位置に荷物を寄せておいて、戦闘準備をする。
「グルルルル⋯」
クマ型の魔物は唸り声を上げながらこちらを睨んで距離を取る。
こちらも身構えながら距離を取るが、
「ねえ⋯何で襲ってこないの?」
旭さんが疑問を呟く。
「だよねえ⋯普通ならもう攻撃に入っているよね?」
そう言いながら、ふと荷物の方に人の気配を感じ、見てみると何人かの男が暗闇に紛れて俺達の荷物を掴んでいる。
「ヤベッ!見つかった!」
男達は荷物を何個か掴むと、一目散に街道の方向へと逃げていく。
「泥棒だー!!!
荷物がー!!!」
「なんやてー!?」
俺の叫び声にカラチ達も気付き、戦闘から離脱して泥棒を追いかける。
ただ、
「お、重い⋯」
泥棒の一人がジャララさんの荷物を持っていこうとしたが、あまりの重さに動けなくなり、あえなく俺達に捕まった。
「コイツは縄で縛っておくから他の泥棒をお願い!」
泥棒をカラチが痺れ粉と縄で動けなくしてから、旭さんが見張っている間に他の仲間で泥棒達を追いかける。
どうやら捕まえた泥棒はテイマーだったらしく、クマ型魔物も戦意を無くして方々へ逃げていった。
「待てー!!」
細道から街道に抜けるが、泥棒の逃げ足が速くて中々追い付けない。
「早く⋯荷物を取り返さないと⋯ココアが!」
「せやった!
宗也はんのカバンの中に入ったまんまやった!」
カラチが予備の縄を投げるがスルリと躱して逃げていく。
その時、前方からドドドドッと足音を立てて馬車が走ってきて泥棒達を轢いていった⋯。
衝撃が大きかったのか、泥棒達は倒れてピクピクとしていて逃げられないみたいだ。
「えっ!?」
「⋯なんやてー!?」
突然の出来事に驚いていると、馬車から出てきたのは、
「ようやく追いつきましたわ!逃がしません事よ!」
と、仁王立ちをしてご立腹しているロナ様だった。
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