第36話 こうして幕は上げられた

闇ギルド『ロシチャカン』に所属している男性に絡まれて、なんとか危機を脱した俺達。

ところがその翌日。

俺達のギルドの外が何やら騒がしいので、窓から外を覗いてみると、

「な、なんだアレ」

はりつけ⋯?」

昨日絡んできた男性があちこち怪我をしてボロボロの状態で木の棒で作られた十字架にはりつけにされて、

ギルドの真ん前にドンッと突き刺さっていた。

「大変だ!助けないと!」

俺が助けに外に出ようとすると、

「行ったらアカン!」

「あれは罠だ!

出たら袋叩きにされるかもしれないぞ!」

カラチとアトルに止められてしまった。

「⋯罠?」

「せや。見てみ?

あそこの建物の影とかに人が潜んでるやろ?」

「舐めた態度取られたみせしめっていうのもあるんだろうけど、こっちが優しい人間だって考えたから、あんな風におとりみたいにはりつけにしたんだろうな」

「でも、あんなにボコボコにしなくても⋯」

少し遠いからではあるけれど、男性はかなりの怪我を負っているように見える。

「ワテらに舐められたから、ととらえたんやないか?

宗也はん、何か絡まれた〜とかそういう事あったって昨日言っておったよなあ。なあ、何があったん?」

「えっと⋯ぶつかりそうになって絡まれて、アトルが転ばせてマッサージを」

「えっ?いかがわしい方の?」

そばで聞いていた旭さんが頬に手を当てながら聞いてきたので、

「違う違う!ふつうの!

で、その際相手の財布をスった⋯んだけど、相手の行きつけの酒場に『返してあげて』って預けてきた」

「それや⋯」

「せやな⋯」

カラチとジャララさんが顔を合わせて頷く。

「でもそれじゃ逆恨みじゃないか?」

「そうそう!俺達そんなに悪い事してないし!」

「財布スるのは悪い事だから反省しようね?」

俺はアトルに諭すように言いながら肩をポンッと叩く。

「まあそれはともかく、これじゃ外に出られないわね」

ため息をつきながら旭さんが呟くと、

「元を絶たんとアカンやろなあ」

カラチも便乗するかのように物騒な事を呟く。

「このままあのギルドを放置しておくのも危ないし、潰すにはそろそろ良いかもしれないわね。

いっそ殺っちゃう?」

親指で首を切るポーズを取りながらギルド管理者のウルさんが殺る気満々な表情で言うものだから、

「⋯ええな、ソレ」

「ウチも賛成〜!」

カラチとジャララさんが便乗するように意見に賛成する。

「ちょっ!

レベル差もあるんだから難しくない!?」

こっちが倒される危険性も考えて俺が止めようとすると、

「私は賛成。このままじゃ塩の街がどんどん寂れてきちゃうし、環境が悪いとそういう人達が集まりやすくなるからさらに環境悪化しちゃうし、どっちにしても早く手を打った方がいいもの」

旭さんが真っ当な意見を述べて、

「私の魔法で塩湖の小屋を爆発させれば⋯」

中々物騒な発言まで飛び出してきた。

(本気だ!旭さんは本気で言っている!)

冷や汗をかきつつ俺がそう察する。

「爆発?

火薬の扱いならワテ得意やで!」

「周りの魔物をテイムして襲わせて⋯」

カラチもジャララもヒートアップして闇ギルドを潰す計画を練ってきている。

「闇ギルドだけに闇討ち⋯」

アトルがブツブツ言いながら自分の斧を手入れし始めている。

「これじゃどっちが闇ギルドなんだか⋯」

俺がボソッと呟くと、

「やられたらやり返す!

ルールやろ!」

まだ何もされてないから!

「でも、あそこってギルド本部なの?

支部とかだったら他の所から仲間の敵討ちに来るんじゃない?」

そこの危険性も踏まえて聞いてみると、

「あそこは儲かるから本部指定したらしいで〜。

と、聞いた事があるで〜」

と、情報通のカラチが教えてくれた。

「じゃあ⋯なんとかして潰そうか」

「オー!!!」

こうして、闇ギルド撲滅作戦が開幕したのだった。

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