第35話 因縁は避けられない⋯のか?
変身薬を購入したため、また赤貧になってしまった俺達。
日銭を稼ぐため依頼をこなそうとしたのだが、
「⋯あまりお金稼げそうなのが無いわね」
そう、物騒な闇ギルドの連中がうろついていたり、街の周りの魔物が強かったりで、俺達でもこなせそうな依頼が極端に少ない。
話し合いの結果、外に出られないカラチにはギルドの手伝いをしてもらい、他のメンバーで手分けして街の依頼や修繕の手伝いで日銭を稼ごう、という結論に至った。
「あんちゃん達、壁の修理手伝ってくれてありがとうな!」
街中の武器屋の外壁が壊れたので直すのを手伝ってほしいという依頼に、俺とアトルが引き受けて現場で手伝う。
「いえ、瓦礫を片付けているだけですから」
「フンフフ〜ン」
俺は壊れた部分を端っこに避けていき、器用なアトルは鼻歌を歌いながら壁をコンクリートみたいな素材で塗り固めていく。
「助かるよ。ロシチャカンの連中に嫌がらせで壊されちまって困ってたんだよ」
武器屋の店主が頭を掻きながらボヤき、アトルの作業を見て、
「器用だな。塗りも丁寧だし。あのギルドに所属だったよな?
俺から他の奴らに修繕の腕を宣伝してやるよ。」
「ありがとうございます!」
「アザーッス!」
この仕事が次の依頼に繋がる。
そう思うとやはり張り切ってしまい、ちょっと頑張りすぎて疲れてしまった。
「うーん、よく働いた!」
背伸びをしながらアトルと歩いていると、ちょっとよろけてしまい、
「おっと!」
向こうから来た男性にぶつかってしまいそうになる。
咄嗟に避けたが、男性は大袈裟に転んで、
「おー痛い痛い。こりゃどこか骨折したかもなあ」
お約束というかなんというか、こちらにイチャモンをつけてきた。
「ごめんなさい。でも、ぶつかってない」
「ああん?ぶつかったから骨折れたんだろうが!」
「へー、骨折れた?どこら辺が?」
煽っている訳では無いんだろうけれど、アトルが男性に触って確かめようとすると、
「ちょっ、やめろ!」
身をよじってそれをかわそうとするけれど、
「よいしょ。で、どの辺?」
道のど真ん中に男性をすっ転ばしてあちこち調べる。
「なっ、何し!う、うわあっ!」
抵抗していた男性が、次第になすがままにされていく。
「あ、アトル?」
「お客さん、凝ってますねえ」
⋯⋯⋯えっ?
「おま、マッサージ上手いな」
すっかり身も心もほぐれた様子の男性がゆっくり立ち上がった。
「こ、これでチャラにしてやるよ!あばよ!」
捨て台詞を吐き、スタコラサッサという表現が似合いそうな足取りで塩湖の方向に男性が走り去って行った。
「行っちゃた⋯アトルありがとう」
お礼を言いながらアトルに向き直ると、
「なんだ、財布の中身これだけか。アイツしけてるなあ」
財布らしき袋の中身を見ながらアトルが独りごちる。
「アトルさん!?なにやってるの!?」
即座に俺は青ざめてしまう。
「ん?迷惑料貰ってもいいかと思って。今頃焦ってるんぞゃないか?アイツ」
「迷惑料でもスリはダメー!!余計な因縁増やさないでー!」
俺の叫びが街中に響⋯かないようになるべく小声で叫ぶのだった。
その後、方々に聞き込みをして、あの男性が行きつけという真面目そうな酒屋の店主に財布を預かってとお願いしたのは言うまででもない。
そこであの男性がロシチャカンの闇ギルド所属というのを知り、
「真相を知ってお礼参りされませんように⋯」
と、密かに心の中でお祈りをした俺だった。
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