第33話 闇ギルドには近付くな
商店のおじさんに教えてもらった道に進むと、見慣れたマークのギルドに到着した。
ニースさんから預かった紹介状を取り出してから扉をくぐると、
「あら珍しい。新規の召喚者?」
気だるそうな雰囲気のバーテンダーが着ているような服装の体格の良い男性が、カウンターらしい席に座ったままこちらを向く。
多分ギルドの責任者なのだろうと思い、
「初めまして。俺達ニースさんから紹介状を預かってきたんですが⋯」
そう言いながら俺はその男性に紹介状を手渡す。
「ああニースちゃん?
あの子達元気にしてた?」
「はっはい!元気にしてます!」
「元気に⋯そう。じゃあ相変わらず兄弟ゲンカしているのかしらね、あの二人」
あの二人とは多分マーローとベニーの事だろう。
男性は紹介状を読むと、開口一番に、
「ニースちゃんからの紹介だったら歓迎したい所だけど、今この街は物騒になっているからあまり長居するのはお勧めしないわよ」
「物騒?」
旭さんが横から口を挟む。
「そうよお嬢さん。
どこかで話を聞いたとは思うけど、近くの塩湖に闇ギルドの連中が縄張り張っちゃってて、塩の採掘許可の回数券を高く売るようになっちゃっててねえ。
さらに街道沿いに強めの魔物が出てきて物流が悪くなっているのよ。
もうホントに踏んだり蹴ったりよねえ」
頬杖をつきながらため息をつく男性。
俺が男性と話をしている間、俺の横でカラチは固まったかのように直立不動になっていたので、
「カラチ、どうしたの?」
そっと聞いてみると、
「このおじさ⋯元女性なんやないか?」
「えっ?」
まあ、仕草は女性っぽいとは思うけれど⋯。
「あらよく分かったわね。こっちに召喚されたら男性になっていたのよ。そちらの僧侶と同じ現象が起こったみたいね」
マジか⋯。
そしてジャララさんの事も見抜くなんて実は凄い人?
「よくウチが元男性って分かったな。普段は分からんように振舞っておったんやけど」
男性に負けじ⋯なのかは分からないけれど、ジャララさんはいつも以上にクネクネとした動きをする。
「アタシ、匂いに敏感になれるスキルを持っているのよ。ちなみに嘘を付いた時に発する匂いも嗅ぎ分ける事が出来るのよ〜」
そう言いながら、なぜかカラチの方を見ている。
カラチ、それを察してさっきから直立不動になっているのだろうか?
「まあその話は置いておいて、5人ともよく来たわね、歓迎するわ」
そう言って右手を差し出しながら、
「アタシの名前はウルよ。
ここのギルドの責任者なの。
よろしくね」
と、挨拶された。
塩湖のほとりに佇むあばら家。
ここに何人かの柄の悪そうな男性が出入りしているのだが、
「アニキ、街でケットシーらしい種族のヤツを見かけたって手下が⋯」
「何?ひょっとしてアイツか?」
あばら家には似合わない、立派な椅子にドカッと座る男に、手下と思われる男が耳打ちをする。
その話を静かに聞いていたアニキと呼ばれた男がニヤリと口角を上げる。
「ジャララの奴、行方不明になってたんでヤツに殺られたのかと言われてたんですけど、どうやらヤツと一緒にいるらしいですぜ」
「寝返った⋯という訳か」
ジャララの話題が出てきた途端、アニキの額に青筋が浮かぶ。
「高い金払って裏切ってトンズラとは、ふてえ野郎だ!」
「どうしやすかアニキ!」
周りの男達が血気盛んな雰囲気でアニキに次々に声をかけていく。
「⋯野郎ども、見かけ次第ヤツとジャララをここにかっさらってこい!血祭りに上げてやれ!」
「おうっ!」
「クシュンッ」
「あらカラチ、風邪?」
くしゃみをしたカラチの顔を旭さんが心配そうに覗き込むが、
「なんか悪寒が⋯」
「あらあ、ギルドの2階を宿屋代わりに使っていいわよ。宿代もまけてあげる〜」
ウルさんのご好意に甘えて、ここを拠点にしばらく滞在する事にした俺達だった。
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