第28話 加勢が(物理的に)力強かった

「加勢するぞ!」

ドドドドドッという足音を響かせてアトルがこっちにやってきた。

「えっ!?

なっ、何でここに!?」

今日、遊ぶ約束もしていないのに街以外の場所で出会ったので、俺がウォーウルフから少し距離を置きながら質問してみると、

「街に用事があって行ったついでにギルドにっ、寄ってみたんだっ!」

話しながらウォーウルフからの攻撃をかわしつつ、投げた斧を掴んで俺の隣に立つアトル。

「で、ここで討伐依頼を受けたって聞いたんで来てみた」

「そんなあっさりと『遊びに来た』みたいに言われても⋯」

俺はハアー、とため息をつきつつ、

「ま、ピンチだったから助かったよ。ありがとう」

俺はお礼を言いつつ、

「でも、危険だったらすぐに逃げてもいいからな。マイアさんに心配かけてしまうから」

「平気平気。ドワーフは頑丈だからちょっとやそっとでケガはしないさ」

アトルはニコッと笑いながら肩に斧を乗せる。

(さすがドワーフ、斧が似合う)

口には出さないが俺は心の中でそう思った。

「とにかくこのウォーウルフを早く倒そう!」

「他のオオカミみたいな魔物のボスみたいだし、こいつが命令を出してから連携取るようになったし、早くしないと他にも被害が出そうだもんね!」

旭さんも俺の意見に同意してくれる。

「ほな防御魔法をアトルはんにもかけといたるわ!」

「援護は任せてや!」

カラチとジャララさんが援護してくれるので安心して後ろを任せて、

「じゃあ旭さんは魔法で援護攻撃!

カラチは弓矢で他のオオカミ魔物を攻撃、ジャララさんは回復と補助魔法をお願い!

俺とアトルでウォーウルフを攻撃するから!」

「分かった!」

サッと作戦を伝えて、俺はアトルと共にウォーウルフに向かって構える。

ウォーウルフは、グルルルルとうなりながら俺達との距離を測りながら臨戦態勢に入る。

そのまま低い体勢でウォーウルフがこちらに突っ込んで来たので、俺とアトルは左右に別れてかわし、避けざまに拳と斧でウォーウルフに攻撃する!

拳が頭にヒットしたのが効いたのか、ウォーウルフが少しぐらつく。

その隙に、旭さんが火炎魔法をウォーウルフに当てて火柱が上がる!

「この魔法こんな威力あるのか!?」

初めて旭さんの魔法を見たアトルが驚きの声を上げるが、

「いや、魔力全力投球スキル持ちなだけ。だから今は魔力スッカラカンだと思うよ」

「ウルファイ⋯モグモグ」

魔力回復のため俺の手作りパンを食べながら旭さんが反論していた。

「この状況でよく食べられるな⋯」

呆れた口調でアトルが呟くと、

「宗也くんの作った料理、回復効果があるのよ。魔力も回復しちゃうんだから!」

口の周りにパンくずを付けたまま自慢げに旭さんが弁明するが、

「ニースのヤツ、宗也達に手伝ってもらっているって言っていたな。だから最近ギルドが賑わっているのか」

ウォーウルフにトドメを刺してから、他のオオカミ魔物に向かって行きながらアトルが話す。

「アトルはん、こっちの援護おおきに〜」

全部の魔物を倒し終わり、ニコニコ顔でカラチがお礼を述べる。

「これだけ倒したら報酬も」

「気が早いわ!」

ジャララさんの皮算用に素早くカラチがツッコミを入れる。

「とりあえずこれで終了⋯かな?」

「じゃあ帰りましょうか」

「アトルさん、ホンマおおきに〜」

「ありがとうな〜」

カラチとジャララさんにもお礼を言われ、照れながらも、

「いやあ、お礼を言われる程じゃないよ。

俺もこの斧返さなきゃならないから一緒に行くよ」

そう言いながらアトルも俺達と一緒に家路への道を歩くのだが、

「冒険⋯か」

小さな声でボソッと呟いたが、小さすぎて誰も聞こえてはいなかった。





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