第26話 気の合う友達が出来たようです

木の枝を集めて、鍛冶屋にアトルと一緒に戻ってきた俺。

修理が終わっていたのか、マイアさんは旭さんとお茶を飲んで待っていた。

「ただいま〜」

「おやおかえり⋯なんだい客人も巻き込んだのかい?」

「あ、いえいえ俺が手伝うって申し込んだんです」

マイアさんがアトルを叱るのではないかと思い込んだ俺は慌てて訂正を入れて庇う。

「あら、そうだったのかい?ありがとうね」

誤解が解けたらしく、マイアさんからお礼を述べられる。

「それで、時計は直ったんですか?」

「ああ。見てみたら欠けている歯車を見つけて、ちょうどその歯車の在庫があったから簡単に直せたよ。あ、急いでなかったらアンタ達もお茶飲むかい?」

「あ、ありがとうございます」

椅子に座ってお茶をいただく。

「あ、修理代は手紙と一緒に入っていたから気にしなくていいよ。全く、ニースちゃんも律儀だねえ。こっちはゼンマイとかを触れるからタダでもいいのに」

「かあちゃ⋯親方、それじゃあ儲けにならないよ」

「アタシは食べ物との交換でもいいくらいなんだけれど」

マイアさんはおおらかな性格で、アトルは少し細かい性格のようだ。

人より小柄だけれどがっしりとした体格⋯気になったので俺は聞いてみた。

「お二人は、ドワーフ⋯なんですか?」

「ああ、そうだよ。先代がこっちに召喚されてそのまま暮らし始めたって聞いているから⋯かれこれ三百年以上前からかな?」

「三⋯」

「まあアタシらは長命種だから『そんなもんか』って感覚だけどね。息子⋯アトルも今50歳だけど、人間でいうと15歳位⋯だったかな?」

「ごじゅ⋯アトルさんは」

「丁寧に言わなくていいよ。呼び捨てで。じゃないとなんだかむず痒くなっちまう」

アトルは首を掻きながら俺に訂正してきた。

「まあ仲良くしてやってね」

ニコッとしながらマイアさんに言われて、

「はいっ」

旭さんと一緒に返事をした。


「じゃあ俺達は戻ります。今日はありがとうございました」

時計を受け取り、俺達は帰り支度をして立ち上がる。

「ハハハ。こちらこそありがとうね。アトル、街まで送って行ってあげな。帰りにあそこの店のパン買ってきてね」

「ヘーイ」

「ハイ、だろ!」

気の抜けた返事をしたため、アトルはマイアさんにこめかみにゲンコツグリグリの刑を受ける事になった⋯。

「ではお邪魔しました」

「イテテテ⋯行ってきます」

頭を抑えながら、アトルは俺達と一緒に街へ向かう。

道すがら、アトルと世間話をしているのだが、

「なあなあ、こっちに来てどれくらいなんだ?」

「やっぱり冒険って大変なのか?」

「元の世界に戻るために冒険しているのか?」

と、矢継ぎ早に質問される。

「アトル⋯冒険に出てみたいの?」

「いっいや、興味があったから聞いてみただけだよ」

首を振っているけれど、目がキラキラしているから誤魔化しきれていない。

「うーん、俺はどうやら母さんがこっちに召喚されてるみたいだから、出来れば会って一緒に還りたいんだよなあ。まあ魔王を倒そうとは思っていないんどけれどね」

「私は知り合いもあっちにいるし、心配しているかもしれないから戻りたいわね。そうじゃないとフォロワーが減っちゃうし!」

「フォロワーってなんだ?」

「⋯こっちの話は聞き流していいからね」

俺の発言に、ムキーとなっている旭さんを放っておいて数分後、街までたどり着いた。

「じゃあこっちに用があるから、ここでお別れだな」

「ああ。また遊びに行くからな」

「ハハハ、暇だったらな」

十字路に差し掛かった所でアトルと別れた。

「なんだかアトルくんと気があっているようね、宗也くん」

「そう?」

素っ気ない態度をしつつ、気の合う友達に会えた気がしているのだった。




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